こんにちは。管理人のアカツキです。
今回の防災アプリは自治体が導入している「ローカル防災アプリ」を取り上げます。
現在、防災アプリは様々な自治体で導入されて来ています。そしてそれが県ではなく市レベルでリリースされている所もあります。たとえば東京都の「東京都防災アプリ」は都単位、広島県広島市の「ひろしま避難誘導アプリ 避難所へGo!」は市単位になっています。これらについては当サイトでも解説記事を掲載しました。
そして今回の記事では、静岡県の「静岡県防災」について見ていきたいと思います。
静岡県防災とは?
バージョン | 年月日 | アップデート内容 |
1.0.0 | 2019.6.1 | リリース |
1.0.1 | 2019.6.2 | 一部不具合修正 |
1.0.2 | 2019.7.24 | 一部機能修正 |
1.0.3 | 2019.11.5 | 一部機能修正 |
1.0.4 | 2020.1.27 | 一部機能修正 |
1.1.0 | 2020.3.5 | 多言語対応 |
1.1.1 | 2020.7.31 | 軽微な修正 |
1.1.2 | 2020.8.1 | 軽微な修正 |
1.1.3 | 2020.8.31 | 一部機能修正 |
1.1.4 | 2020.9.30 | 投稿機能追加 |
1.1.5 | 2020.10.8 | iOS14に対応 |
1.1.6 | 2020.11.10 | 一部機能修正 |
1.1.7 | 2020.12.8 | 避難行動を登録する機能を追加 QRコードによる避難所チェックイン機能 |
1.1.8 | 2021.3.5 | 一部機能修正 |
1.1.9 | 2021.6.4 | 一部機能修正 |
1.1.10 | 2021.7.5 | 新しい避難情報に対応 |
1.1.11 | 2021.7.26 | 一部機能修正 |
「静岡県防災」とは?
- 静岡県が無料で配信するスマートフォンアプリ
- 2018年(平成30年)7月豪雨災害(西日本豪雨)を教訓にして、次のことを目的に開発
- 緊急防災情報の伝達の多様化
- 地域の災害リスクの理解促進
- 非常時の適切な避難行動の支援
- 2019年(令和元年)6月に配信開始
- 2020年(令和2年)6月1日時点で、11万5千件以上のダウンロード
- 11か国語に対応
- 日本語、ポルトガル語、フィリピノ語、中国語(簡体、繁体)
韓国語、ベトナム語、インドネシア語、スペイン語、タイ語、ネパール語、英語
- 日本語、ポルトガル語、フィリピノ語、中国語(簡体、繁体)
「静岡県防災」は、静岡県が提供する「県」単位のローカル防災アプリです。
概要にもあります通り、2019年(令和元年)6月にリリースされました。西日本豪雨を教訓にして開発されたとのことです。
そのダウンロード数2020年(令和2年)6月1日時点で11万5千件以上。
静岡県の人口は約361万人とのことですので、すべて県内の方がダウンロードしたとすれば、県民の約3.2%の方がアプリを使っていることになりますでしょうか。
ではアプリでどんなことができるのか?見ていきましょう。
メインコンテンツは六つ
まずはメイン画面です。一瞬だけ静岡県防災のタイトル画面が現れ、切り替わります。
スッキリまとまった画面になっていますね。
メイン画面では、今発表されている防災情報やお知らせ欄で最新の情報をチェックできます。
次にメインメニューです。
大きく六つのコンテンツがありますね。
これらはいずれも利用者の行動をサポートするためのコンテンツになりますが、その目的から大きく二つに分類されています。
一つ目は「緊急時の行動サポート」です。
そしてもう一つは「平常時のトレーニングをサポート」する機能になります。
いずれもコンテンツが三つずつ、バランスよく配分されていることが分かるかと思います。
避難トレーニングなるコンテンツもあり、内容が気になりますね。
それでは、これらのコンテンツでどのようなことができるのか、一つずつ見ていくことにしましょう。
静岡県防災の機能
防災情報・お知らせ(①)
三つの情報を取得
まずは「防災情報・お知らせ」です。さきほどのメイン画面にも一部防災情報が表示されていますが、ここではよりくわしい情報を見ることができます。また、配信される情報は大きく三つあります。
- 防災情報
- 行政情報
- 防災行政無線
「防災情報」では現在地と設定で選択した地域(最大三か所)について気象情報などが配信されます。
配信される情報は幅広く、中には海の安全情報といったものも配信されています。
「行政情報」は、2021年(令和3年)5月20日より配信が開始されました。
ここでは、静岡県からのお知らせが掲載されています。中には「第136回ふじのくに防災学講座の開催についてのお知らせ」という情報もありますね。
「防災行政無線」では、アプリから無線放送を聞くことができます。無線放送は、街中で柱にスピーカーが付いているのを見かけると思いますが、それが聞きにくい場合に役に立つ機能だと思います。
マップ・避難場所等(②)、 現在地の防災情報(⑤)
避難所の場所やハザード情報を表示
続いて「マップ・避難場所等」と「現在地の防災情報」です。ひとくくりにして取り上げていますが、これらはほとんど同じ機能ですので、まとめてご紹介します。まずは画像をご覧ください。
いずれもタップすると地図が表示され、現在地から最寄りの避難所が表示されます。
画面上には五つのサブメニュー、右上と右下には「避難コンパス」や「状況種別、災害状況」といったメニューもありますね。
「避難コンパス」は、現在地からの最寄りの避難所や自宅への距離と方位を示してくれます。避難時のアシスト機能と言えるでしょう。画像のように画面が二分割されており、上側にカメラの映像、下側に地図がレイアウトされています。
カメラ映像には、自宅や避難所の方位が表示されるようになっています。このようなカメラを通した画像に何らかの情報を加えて表示する技術は、AR(Augmented Reality:拡張現実)と呼ばれます。避難コンパスはAR機能を防災に利用したものと言えるでしょう。
この時の動作には一工夫が施されており、スマートフォンを立てるとカメラが起動します。またスマホを水平に持つとコンパスに切り替わります。端末を持ちながらの行動を想定した作りになっていると感じました。
また「状況種別」と「災害状況」ですが、これは特別の状況があった時に地図上に!マークが表示されるようです。通常は表示される設定になっており、右下の「災害状況」をタップすることで非表示にすることができます。
「状況種別」には、!マークの凡例が示されています。画像のように四種類の情報が対応しています。
また、注意報や警報などの気象情報が発表されている場合にはその旨表示されるようになっています。
五つのサブメニューで情報収集
続いて、五つのサブメニューについて見ていきましょう。
- マップ
- 施設等選択
- ハザード
- 危険度情報
- 現在地情報
マップは4種類
まずは「マップ」です。こちらは地図の切り替え機能になります。選べる地図は四種類。航空写真や山や谷などが立体的に強調される地形、国土地理院による地図があります。基本的には標準のGoogle Mapで良いでしょう。
施設等選択は河川カメラも
次に「施設等選択」です。マップを開いた時、すでに地図上にいくつか避難所が表示されていますが、表示する施設を変える機能になります。その種類は実に多く、書き出すと次のようになります。かなりの数ですよね。
- 開設中の避難所(指定避難所)
- 避難所(指定避難所)
- 避難場所(指定緊急避難場所)
- 地震、津波、洪水、内水氾濫、土砂災害、高潮、火災、火山噴火
- これらすべての表示、または一つに絞った表示が可能
- 水位観測所
- 河川・道路カメラ
この中には河川カメラもあり、その川の現在の様子を確認することができます。平常時の画像や水位データも掲載されており、多くの情報を得ることが可能です。
富士山噴火のハザード表示もできます
「ハザード」ではその場所のリスク情報を取得できます。静岡県という位置柄、南海トラフや相模トラフについてのハザード情報も含まれています。
- 土砂災害
- 洪水浸水想定区域(計画規模)
- 洪水浸水想定区域(想定最大規模)
- 津波
- 地震(揺れ)
- 南海トラフ(基本ケース、東側ケース、西側ケース)、相模トラフ
- 液状化
- 南海トラフ(基本ケース、東側ケース、西側ケース)、相模トラフ
- 火山
特に火山については、富士山がありますからそのハザードマップも用意されています。富士山への登山ルートも表示されていて、本当にたくさんの情報を引き出すことができます。
ただ、ハザード情報はある程度地図をズームしないと表示されません。また、富士山の噴火ハザードや登山ルートは線が細かすぎてマップに埋もれているように見えます。
ハザード情報はその場所だけでなく、県全体のものを確認したいという方もおられると思います。この点は改善が必要でしょう。
危険度情報も充実
「危険度情報」は、気象庁の情報(一部日本気象協会)と静岡県の情報が用意されています。
- 気象庁の情報
- 雨雲の動き:高解像度降水ナウキャスト
- 今後の雨:降水短時間予報
- 土砂災害:土砂災害警戒判定メッシュ情報 (土砂キキクル)
- 浸水害:大雨警報(浸水害)の危険度分布 (浸水キキクル)
- 洪水:洪水警報の危険度分布 (洪水キキクル)
- 雷ナウキャスト
- 台風情報(日本気象協会)
- 静岡県の情報
- 雨量情報:静岡県土木災害情報
- 水位情報:静岡県土木災害情報
- 土砂災害危険度情報:静岡県GIS(静岡県地理情報システム)
現在地情報
最後のサブメニューである「現在地情報」です。こちらはその場所の位置情報や周囲の避難所情報、発表されている気象情報や避難情報などを教えてくれる機能です。
記事の初めに、マップ・避難場所等(②)、現在地の防災情報(⑤)はほとんど同じ機能と述べましたが、両者は開いた時に現在地情報が表示されているか、いないか、それだけの違いになります。
危険度体験(③)
ここからは平常時のトレーニングをサポートする機能になります。まず取り上げるのが「危険度体験」です。こちらもカメラとマップの二本立てになっており、その場所の洪水と津波による浸水想定リスクを確認することができます。
上の画像(1)と(2)はそれぞれ洪水と津波の浸水想定を見たものです。下の地図に色が付いていますね。この色によってその場所がどれだけ浸水してしまうのかを知ることができます。
そしてカメラでのぞいた場所の浸水深が位置情報から自動的に読み取られ、(3)のように赤白の深さゲージと親子のシルエットに対して水の深さがどのくらいになるのか、そのイメージが表示されるようになっています。1m未満で子どもの頭に水面が来ていることが確認できると思います。
残念ながら私は北海道に住んでいますのでリスクデータが入っておらず、カメラに浸水イメージは表示されていません。(1)と(2)は地図を動かしただけのものであることをご了承ください。ただ、浸水深の選択はできますのでイメージ自体は(3)のように見ることができます。
静岡県内であればこの機能をしっかりと体験することができると思いますので、その場における浸水深を知る良いツールになると思います。
避難トレーニング(④)
次に「避難トレーニング」です。こちらは大変ユニークで有益な機能だと感じました。
文字通り、災害の発生を想定して自分が行くべき避難場所へのルートを実際に歩いて確認できるという機能になっています。
こちらについては県が行った下田市のトレーニング風景と、静岡放送(SBS)のニュース映像が大変分かりやすかったので、ぜひご覧ください。
特にリアルな感覚でトレーニングができると感じたのが「津波モード」という機能の存在です。
これはトレーニングを行った後に選択でき、地震(南海トラフ)発生から1分おきに津波がどのように広がっていくかを地図上に表示する機能になっています。
自分が歩いた場所も同じく1分おきに表示されますので、本当に災害が起こった時の自分自身の行動をより確実に、そしてより素早く起こすことにつながると思います。
学習コンテンツ(⑥)
本アプリには学習コンテンツも組み込まれています。項目は次の4つです。
- 学習する
- 確認テスト
- 参考コンテンツ
- 参考図書
「学習する」で基本を学ぼう
まず、「学習する」ですが、こちらは避難場所など、防災用語に関する知識が簡単に解説されています。解説は大きく2章から成り
1.安全な避難のために ~アプリ活用のために知っておきたいこと~
(1) 避難情報
(2) 避難行動
(3) ハザードマップ
(4) 気象警報等
(5) 危険度分布(目次にはありませんが、解説が用意されています)
2.災害に備える
(1) 住宅の耐震化
(2) 家具の固定
(3) 食料・水・トイレ等の備蓄
(4) 気象警報等(1.でも解説されているため、省略されています)
で構成されています。
それぞれの解説は、すべてスマホの画面1画面に収まるように要点がまとめられたものになっています。
解説は大変わかりやすいのですが、メニュー画面に戻ったり、各節ごとに飛ぶ機能がないので少し操作感が良いとは思えない部分があると感じました。 また、1.には(5)危険度分布があるのですが、この目次への反映が抜けているようです。
少し使いにくい部分はありますが、大事な点は押さえているのでぜひ活用してみましょう。
「確認テスト」で確認
「確認テスト」では「学習する」で学んだことをチェックする簡単な問題が10題出題されます。
ちょっと引っかけ気味な問題が多い気がしますが、より一歩踏み込んだ理解を試されているように感じました。間違えた場合は解説が表示されるので、よりその項目の理解が深まるかと思います。
「参考コンテンツ」でさらに防災を学ぶ
「参考コンテンツ」には二つのサイトへのリンクが掲載されています。
前者はNHKが東日本大震災を機にNHKが持つ映像を公開する「東日本大震災アーカイブス」へのリンクです。実はこちらは今年2021年(令和3年)4月に「災害アーカイブス」と名称が変わっております。
これは、3.11から10年となることから、さらに広く自然災害についてNHKが保管する映像や証言を公開していく場へと機能を強化するためです。今まで発生した災害の映像を見ることができ、次の世代に災害を伝える貴重なものになっています。
後者は気象庁が提供する、インターネットで学ぶe-ラーニングのサイトになります。
「大雨の時にどう逃げる」というテーマで台風や豪雨から「自らの命は自らが守る」基本的な知識、とるべき行動を動画で学びます。
動画教材は17分。一人でも家族でも。そして自主防災組織の研修にも大いに役立つコンテンツになっています。
「参考図書」でもっと防災を学ぶ
学習コンテンツは「参考図書」を入れて全部で四つ。こちらの参考図書では、次のリーフレットを電子書籍という形で見ることができます。
- 避難所運営マニュアル (避難生活の手引きもこちらから入手可能です)
- 避難生活の手引き
- 新型コロナウイルス感染症を踏まえた避難所運営ガイドライン (ページ一番下)
- 『人材台帳』作成のすすめ
- 静岡県の地震・津波対策
いずれも静岡県に特化した電子書籍ポータルサイト「Shizuoka ebooks(しずおかイーブックス)」上でこれらを読むことになっているようです。
また、「静岡県の地震・津波対策」 以外の冊子については、直接PDFファイルとして取得することも可能です。先ほどの囲みに設定しているリンクから関係するページに移動することができます。
リンク集
最後にメイン画面の下にある三つのボタンについて見ていきます。このうち「トップ」は他のコンテンツから元のメイン画面に戻るためのボタンになります。そこで、残り二つについて確認していきます。
はじめに「リンク」ですが、こちらは静岡リンク集と銘打たれており、災害時あるいは平時の情報収集に大変有益と思われるサイトへのリンクがまとめられています。そのジャンルはほぼ必要だと思われるものを網羅しており、次のようになっています。
- 災害全般
- 地震・津波
- 風水害
- 火山
- 原子力災害
- ハザードマップ
- 防災学習
- ライフライン (電気・通信・鉄道・船舶・航空機・道路)
何か情報が欲しい!と思ったら、まずはここから調べてみましょう。
設定メニューには避難所生活の支援機能も
アプリの設定はこちらから行います。メニューは次のようになっています。
- 地域選択
- プッシュ通知選択
- 全国避難所リスト
- 安否登録
- 【試行版1】避難行動を登録
- 【試行版2】避難所チェックイン・退出
- 関係者ログイン
- 各種設定
- このアプリについて
こちらもたくさんありますが、基本的には標準のままでも十分使えると思います。また「関係者ログイン」という機能がありますが、これは地域の防災組織の方向けの機能のようです。
現在、新型コロナウイルスの流行によって避難所での避難生活における感染対策ということが現実的な問題になっています。このことを想定した機能も静岡県防災に追加されており、それが【試行版】の内容になります。こちらについてもSBSが取材した動画が大変分かりやすかったので掲載します。
まとめです
自治体が導入している「ローカル防災アプリ」について、静岡県の「静岡県防災」を取り上げてみました。平常時に避難行動を学ぶコンテンツと、災害時に避難を支援するコンテンツの二つが合わさり、大変有益なアプリになっていると感じました。
また、避難所での生活を想定した機能も追加されていて今後さらにアプリが使いやすくなることが期待されます。ぜひ使ってみてください。
また全国のローカル防災アプリについてリンク集を作成しました。こちらもぜひご活用ください。