こんにちは、管理人のアカツキです。
今回取り上げる防災アプリは「ひろしま避難誘導アプリ 避難所へGo!」です。
名前の通り、広島県広島市からリリースされている公式アプリになります。
防災アプリは、全国的に利用ができるものも多々ありますが、調べていくと自治体単位でもリリースしている所があります。言うなればローカル防災アプリといったところでしょうか。
ではローカルなアプリなので他の地域には関係ないのだろう、というとそうでもないように思います。たとえばアプリが導入されている地域に旅行や出張などで訪れた際、アプリをインストールしておけばGPS機能で現在地を取得し、その場に合った防災情報が提供されます。
それだけではなく、最寄りの避難所情報やそこに至るルートを表示してくれる機能を備えているアプリもあります。
ローカル防災アプリについて取り上げ、周知することは、地域防災の観点からも大事なことだと直近の長雨を見て感じております。今後もそのようなアプリをご紹介していきたいと思います。
ローカル防災アプリ特集の第一弾は「ひろしま避難誘導アプリ」です。
ひろしま避難誘導アプリとは
広島市公式の防災アプリです
こちらが今回取り上げる「ひろしま避難誘導アプリ」です。
何やら・・・プロ野球のアノ球団のマスコットを務める某坊やと大変よく似たイラストが目に入りますね。しかもバットではなく拡声器を右打ち、ではなく右手に持ち赤ヘルを防災ヘルメットに替え、非常持ち出し袋を背負い、避難を誘導しているように見えます。
ひろしま避難誘導アプリは、広島県広島市(危機管理室危機管理課)が公式にリリースしている防災アプリです。名前の通り、災害発生時において最寄りの避難所への最短ルートを表示して避難をアシストするアプリになります。
イラストには広島カープのカープ坊やを採用しており、より地元の人に使ってもらえるような配慮がされています。
リリースは2020年(令和2年)です
ひろしま避難誘導アプリは、昨年2020年(令和2年)6月5日から配信を開始しています。
現在までのバージョン履歴(iOS版)は次の表のようになっています。
バージョン | 年月日 | アップデート内容 |
1.0.0 | 2020.6.5 | リリース |
1.0.1 | 2020.6.11 | 一部機能の修正 |
1.0.2 | 2020.7.31 | 熊野町を対象に追加 一部機能修正 |
1.0.3 | 2020.9.14 | 一部機能修正 |
1.0.4 | 2020.9.24 | 一部機能修正 |
1.0.5 | 2020.10.8 | iOS14に対応 |
1.0.6 | 2021.12.8 | 内水浸水想定区域を更新 |
1.0.7 | 2021.3.31 | ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、タガログ語に対応 |
1.0.8 | 2021.5.20 | アプリの冠名称を変更 広島市避難誘導アプリ→ひろしま避難誘導アプリ 非難情報等の名称を変更 地域選択から安芸区:幸崎(海田南)を削除 |
1.0.9 | 2021.6.23 | 一部機能修正 |
1.0.10 | 2021.7.20 | 軽微な修正 |
若者のアイデアを取り入れて設計
アプリ開発までの経緯を見てみますと、リリース1年前の2019年(令和元年)9月にまでさかのぼるようです。広島市は同月13日に令和元年第3回の広島市議会定例会を開いており、提出された補正予算案にひろしま避難誘導アプリの予算が計上されています。この議会に先立ち、提出する案件について広島市長の記者会見が同月3日に行われています。
この記者会見においてもアプリの導入について言及がされており、記者とやり取りがなされています。広島市のサイトに会見録とその動画ともどもアーカイブされており、確認することができます。
アプリ開発の背景には、災害時にすべての人が避難情報やハザード情報の入手を可能にしたいという思いがあると市長の会見から受け取りました。すべての人には、広島市に住んでいる人はもちろん、市内を移動している人、通勤通学の人、そして国内外からの観光客も含みます。このような人たちへの情報提供がないと安全は守れない。
そこで一般に広く普及しているスマートフォンで防災情報を入手可能にしようという発想で、若い人たちのアイデアを議論しながら取り入れているとのことでした。
会見でも言及されておりますが、こうした自治体による防災アプリ開発はかなり行われています。
当サイトでも「東京都防災アプリ」について取り上げたことがありますし、新潟県、大分県も県単位でリリースしています。会見ではこのほかに静岡県や和歌山県が県単位で、滋賀県大津市と三重県紀北町が市町単位でアプリを導入していることが示されていました。
(東京都防災アプリの解説記事)
そして、(会見時の年度から)来年度の出水期(水害が多くなる季節、6月~10月頃)にはアプリを利用できる状況に持っていきたい、と市長は答えられていました。
果たして「ひろしま避難誘導アプリ」は2020年(令和2年)6月にリリースの日の目を浴びることとなりました。
ひろしま避難誘導アプリの機能
それでは、アプリで具体的にどのような情報を入手できるでしょうか。
こちらがアプリ起動後の画面になります。
非常にすっきりとした画面構成になっていますね。天気と気温をまず確認できるようになっています。そして6つのボタンがあり、さらにその下に3つのボタンが配置されています。
ですので、画面から実際に私たちがタップして操作するのは、合計9つのボタンのみ、ということになります。わかりやすいですね。まずメイン6つのボタンについて見ていきましょう。
危険度の確認
まずは左上の「危険度の確認」です。ここをタップすると現在地の情報が表示されます。
具体的には次のような情報が表示されます。
- 今の場所(所在地)
- 緯度と経度
- 標高
- 発表されている気象情報
- 発令されている避難情報
- 洪水浸水想定区域
- 所在地から一定距離内にある避難所等の数
これは地図の上にある5つのメニューボタンのうち、左から4番目の情報表示機能です。
危険度の確認をタップすると、この現在地に関する情報が優先的に表示されます。
この点だけでもすぐに欲しい情報が取得できる、そのように思います。
またこれら5つのメニューは、どれも自分が今いる場所の災害に関する情報を入手できまたどこに避難すべきかを案内してくれるようになっています。その残り4つについて確認していきましょう。
マップは充実の4種類
まずは最初の「マップ」です。
こちらは地図をどのような形で表示するかという機能です。
標準ではおなじみのGoogle Mapになっています。
この他にも「航空写真」があったり、より立体的に表示して地形を強調する「地形」や「国土地理院による地図」を選択することができます。
基本的には標準のGoogle Mapで良いかと思いますが、その場所が平地なのか、山なのかよりくわしく見たい場合に他のマップが役に立つでしょう。
ピン表示で避難場所をチェック
続いて「ピン表示」です。こちらも便利な機能です。
ここをタップすると、地図上に次の情報を表示してくれます。
- 開設中の避難所
- 避難所(指定避難所)
- 拠点的な指定緊急避難場所
- 避難場所(指定緊急避難場所)
- 浸水時緊急退避施設
- 帰宅困難者一時滞在施設
- 災害医療機関
- 給水拠点
ここで表示させたいピンを選択した後、自動的に画面が更新されます。
ハザードでその場所の災害リスクをチェック
「ハザード」では、今いる場所の災害リスクを知ることができます。具体的には次の情報を表示することができます。
- 土砂災害警戒区域
- 洪水浸水想定区域(計画規模)
- 洪水浸水想定区域(想定最大規模)
- 津波浸水想定区域
- 高潮浸水想定区域(伊勢湾台風規模)
- 高潮浸水想定区域(30年確率)
- 内水浸水想定区域(対象降雨 81mm)
- 内水浸水想定区域(対象降雨 121mm)
- 内水浸水想定区域(対象降雨 130mm)
- ため池浸水想定区域
- ハザードの説明
こちらは画面に一種類の情報のみが表示されるようになっています。
そのリスクに応じて色分けされますが、それらは「ハザードの説明」に示されていますので、こちらも合わせてご確認ください。
ARで自宅と避難所の方位を確認
次は「AR」です。近年は色々なところで聞くようになった言葉だと思います。これはAugmented Realityの略で日本語では拡張現実と呼ばれる技術です。何やらカッコイイ響きですね。
ARは実際の風景にデジタル機器で加工した情報を加えて表示する技術のことを言います。どのように使われているのか、さっそく画像を見てみましょう。
最初の画像のように、ARモードでは画面が2段になります。上側にスマホのカメラ画像が出るようになっています。ですので、このモードはアプリによるカメラ使用を許可していないと使用できません。
カメラ画像には細かい目盛りが打たれていますね。これは方角を示しています。そして設定した自宅や避難所の位置が分かるようになっています。画像では、「自宅の方向」と表示が出ていますね。ですので、この方向に進んでいけば自宅がある、ということになります。
ちなみに、スマホを立てた状態では1枚目のようにカメラが起動しますが、横にするとコンパスが表示されます。実際に徒歩で避難所に向かうことを考えた時、スマホは横にしてそれをのぞきこむように歩くことが想定されます。となるとカメラ画像がオンのままだと、カメラは常に地面を映してしまうと思われるのでコンパスにしたのでしょう。
実用性を考えて上手く機能を切り分けているなと感じました。
最寄りの避難所へ
このボタンは、避難所が開設されている場合に使用可能になります。
ですので、こちらについては広島市のアプリ紹介ページにあるパンフレットからご紹介します。
「最寄りの避難所へ」をタップすると、現在開設されている最も近い避難所へのルートを表示してくれます。サブメニューにはハザード表示機能もあるので、最初に設定された道にハザード情報的にリスクが高いと思われる場所があるかを事前に確認することができます。
もしそのような場所があったり、立ち寄りたい場所があれば、「経由地」を追加することができます。パンフレットにもありますが、経由地は最大で10か所追加でき、しかもそれらに名前を付けたり、入れ替えたりすることもできます。
私も実際に試してみましたが、よほど無茶な経由地を追加しない限りは最短ルートが表示されます。さらに加えてルート全体の距離などが表示されると、より使い勝手が向上するかも知れないですね。
安否登録
災害時に、あの人の安否が知りたい、あの人に安否を伝えたい、という状況が生まれてくることが考えられます。
そのような時に使われるのが安否確認サービスです。「安否登録」ではそれらのサービスへのリンクが提供されています。
画面にもありますように、災害用伝言版(web171)、J-anpi、そしてGoogleパーソンファインダーへアクセスすることができます。
これらの安否確認サービスについては、当サイトで以前解説記事を掲載しました。合わせてこちらもご覧ください。
防災ハンドブック
こちらの「防災ハンドブック」では、広島市が発行している防災啓発冊子「たちまち防災」の電子版を読むことができます。
ところで、「たちまち」は広島弁で「とりあえず」という意味があるようですね。
したがって「たちまち防災」を読んで、「たちまち(とりあえず、すぐに)」災害に備えよう、という意図が込められているとのことです。
電子版ではハンドブックすべてを掲載しているわけではなく、ポイントとなる部分についてピックアップされています。
ちなみに、たちまち防災は冊子版やブラウザで見ることのできるウェブブック版、そしてPDFファイルのダウンロード版があります。くわしくは先ほどお示しした参考リンクをご覧ください。
避難所検索
続いて「避難所検索」ですが、こちらは危険度の確認と同じ画面が表示されるようです。
まず避難所検索では地図上にある避難所が表示されます。
一方で危険度の確認では、サブメニューである「情報表示」が自動的に表示されるようになっています。細かく見るとちょっとだけ違いますが、基本的には同じ機能と考えて良いでしょう。
防災情報・お知らせ
この「防災情報・お知らせ」では、現在地に発表されている注意報や警報などが自動で取得されます。
これらのメイン機能によって、必要な情報はほとんど取得できるのではないでしょうか。
リンク・メニュー
最後は画面下の3つのボタンです。「トップ」は別の画面から最初の画面に戻るときに使うボタンです。リンクボタンとメニューボタンについて見てみましょう。
充実したリンク集
「リンク」は最初の画像にその内容のすべてが収まっています。一見少なく見えますが、その先の内容が非常に充実している印象を受けました。
特に「広島市リンク集」は気象情報や電気、ガス、水道のインフラはもちろん、通信、鉄道、バス、アストラムラインやフェリーなど関係する事業者へのリンクが網羅されています。市内の人はもちろん、観光客に対しても大変有益な情報リンクと言えると思います。
メニューで通知情報を選択
最後に「メニュー」ボタンです。こちらは実質アプリの設定画面と言っても良いでしょう。
アプリからの通知は「プッシュ通知選択」から選ぶことができます。この中に「南海トラフ情報」が入っていますが、中国地方、特に広島市においても最大震度6弱が想定されているということですので、ぜひONにしておきたいところです。
通知の中には停電発生状況の通知もあります。欲しい情報はここでしっかりと設定しておきましょう。また、アプリは多くの言語に対応しています。画像はiOS版ですが、スマホの「設定」から言語を変えることができます。
まとめです
今回の防災アプリは、「ひろしま避難誘導アプリ避難所へGo!」を取り上げました。
記事中にも少し触れましたが、県や市町レベルで防災アプリを導入する自治体が増えてきています。
スマートフォンの普及で多くの人があらゆる情報を簡単に入手できるようになってきています。
その観点から考えても、防災情報に特化したアプリは今後も増えていくのではないでしょうか。
今後もローカル防災アプリを取り上げていきたいと思います。