こんにちは!管理人のアカツキです。
今回取り上げる防災アプリは「Safety Tips」です。
こちらは主に日本を訪れる外国人旅行者向けのアプリになります。
Safety Tipsでどんなことができるのか、早速見ていきましょう!
Safety Tipsとは
外国人旅行者向けの防災情報通知アプリです
Safety Tipsとは、日本国内における次の情報をプッシュ通知する災害時情報提供アプリです。
- 緊急地震速報
- 津波警報
- 気象特別警報
- 台風情報
- 噴火速報
- 熱中症情報
- 国民保護情報
- 避難勧告など
開発は防災・減災ソリューション事業を手掛けるアールシーソリューションで、監修を観光庁が行っています。
緊急地震速報を通知してくれるアプリ「ゆれくるコール」をご存じの方も多いと思いますが、こちらのアプリを開発した会社でもありますね。
ちなみに、ゆれくるコールは今年5月13日に再リリースが行われました(iPhone版のみ)。
本アプリは、主に訪日される外国人の方が対象で、観光庁の監修のもと2014年(平成26年)10月から提供が開始されています。最新バージョンは3.8.2です。
14か国語に対応!
アプリのユーザーを外国人の方としているので、対応する言葉も実に豊富です。
日本語も含めその数、なんと14か国語(15言語)です!
- 日本語
- 英語
- 中国語(簡体字、繁体字)
- 韓国語
- スペイン語
- ポルトガル語
- ベトナム語
- タイ語
- インドネシア語
- タガログ語
- ネパール語
- クメール語
- ビルマ語
- モンゴル語
それでは、アプリでどのような情報が取得できるのかを具体的に見ていきましょう。
Safety Tipsの機能を紹介
画面はシンプル
アプリを初回起動後、言語等の設定が必要になります。こちらについてはこの後解説します。
設定を終えた後の画面は下のようになります。とてもシンプルなメニューになっていますよね。
メニュー画面には現在発表されている警報と選択した地域の天気が表示されます。
これらはタップすることで、警報については地震や津波などの各種警報が、天気については週間の天気予報と全国の天気が表示されます。
天気については℃(摂氏)だけではなく℉(華氏)温度も表示しています。温度を表す単位には摂氏(せっし)と華氏(かし)がありますが、アメリカは華氏温度が使われていますので、このような配慮がされているのだと思います。
設定画面
最初はここから
ここの設定は、アプリを最初に立ち上げたときにすることになります。
起動後には次のような画面が出てきます。まずは使う言語と出身国を選びましょう。
ちなみに、言語を選ぶと即座にアプリに反映されて文字が変わります。
続いて「あなたの国・地域」ですが、こちらは変更しても特に変化は無いように見えます。
しかし後で出てくる「緊急連絡先情報」に関連する項目になります。
言語とまとめて変更するようにしましょう。
言語と国を選ぶと「GPSで現在地を使用する」ボタンのみが表示されますが、これはこのままタップして下さい。ボタンを押すと通知を受信したい予測地点を選ぶようになっており、ここで初めてGPSを使用するか、リストから地点を選ぶかを決めるようになっています。
これで初期設定は完了です。先ほどのメニュー画面が表示されたと思います。
変更したい場合は、歯車のアイコンからいつでも変更が可能です。
滞在、訪問予定の場所があれば予測地点に追加を
予測地点設定の補足です。
この地点は、最大5か所まで選ぶことができます。
使い方ですが、旅行でここに滞在する予定がある、ここを訪れる予定などがある時にその場所を登録します(日本国内)。そうすると、登録した場所についての災害情報が通知されてくるようになります。
一方でGPSを使用した場合「地点の自動設定」がONになっています。
この場合は、自動的に今いる場所についての災害情報が通知されてくるようになります。
アプリによると、この通知は予測地点についてはその最終変更日から一か月以上経過した場所については通知が来なくなるということです。
地点の自動設定をONにしていると、予測地点の最終変更日から一か月以上経過していても通知を受信することができます。
それでは、個別にメニューを見ていきましょう。
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地震情報
まずは地震情報です。こちらでは、過去の震度3以上の地震について最大10件の情報を確認することができます。
タップすると、自動的に震源(震央)地の地図と観測された震度が表示されるようになっています。
画像では英語の場合をお示ししました。多言語対応の一端をご確認できるかと思います。
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気象情報
さきほど設定した地点について、発表されている気象注意報や警報が表示されます。
また台風情報も用意されており、水害リスクが大きくなる6月から10月の「出水期」にも備えられるようになっています。
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噴火警報
日本は火山国ですので、噴火に関する情報も設定されています。
ここが必要になる頻度はそれほど高くはないと思いますが、重要な情報です。
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熱中症情報
環境省と気象庁が取り組んでいる熱中症警戒アラート情報が表示されます。
画面下にはアラートへの対応フローチャートなどもあり、いざという時の対応ができるようになっています。
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医療機関情報
ここは非常に重要な情報です。
旅行中に体調が悪くなってしまった、ケガをしてしまったということが起こるかもしれません。
しかし普段と全く異なる環境では、どのように医療を受けて良いか分からないですよね?
そのような時はぜひこちらを活用してください。日本政府観光局(JNTO、独立行政法人国際観光振興機構)による医療機関検索サイトへのリンクに移動します。また、PC用のサイトも用意されています。
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交通機関情報
こちらでは鉄道、空路、バスの検索を行うことができます。
外部サイトである「乗換案内NEXT」に移動し、そこで経路を調べることになります。
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避難勧告・指示等
大雨などにより、自治体から避難指示等が発令されている場合にアクセスします。
また、避難情報が発令された時に取るべき行動がフローチャートで示されています。
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事前学習
災害について学ぶコンテンツです。
地震の震度や津波警報、熱中症など各メニュー項目について簡易ではありますが要点をしぼった解説がされています。
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コミュニケーションカード
こちらは災害時、外国人の方と確実にコミュニケーションを取るためのフレーズが収められています。
大きな災害が発生した場合、私たちも混乱している状態が想定されます。
そのような時、日本を訪れている外国の方だって混乱していないとは言えないと思います。
今はどういう状況なのか、どこに避難したら良いのか、食べ物はどこで確保できるのか・・・といった情報をやはり求めているはずです。
しかし周りは当然ながらほとんどが日本人でしょう。英語であればある程度話ができるかもしれませんが、確実に伝わるかは分かりません。
コミュニケーションカードはそのやり取りを円滑にするためのツールです。
上は一例ですが、この画面を見せることですぐに相手にこちらからの要望を伝えることができます。
後の展開はどのようになるかは分かりません。しかしまず第一に何を求めているか。これを伝えることが大事なのだと思います。
そのバックアップとして、音声翻訳アプリ「VoiceTra(ボイストラ)」へのリンクが張られています。
これは情報通信研究機構(NICT)が開発した音声翻訳アプリで、なんと31言語に対応しています。
個人利用は無料ですので、もしもの時に私たちもインストールしておくと良いかも知れません。
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緊急連絡先情報
消防署や警察署、そしてJNTOの訪日旅行者コールセンターの番号がここで案内されています。
また最初の設定画面で国の登録をしておけば、こちらに大使館情報が反映されるようになっています。
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リンク
こちらは旅行者に役立つ情報がまとめられています。
他のコンテンツと同じ内容の部分もありますが、無料公衆無線LANスポットを探せるなど情報が充実していると思います。
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国民保護情報
弾道ミサイルが発射された時など、Jアラートで配信する情報がここで確認できます。
おそらくは使う可能性が低いとは思いますが、もしもの時を想定して組み込まれているコンテンツだと思います。
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アプリを支援する国の取り組み
Safety Tipsは3.11の教訓から生まれました
ここまでSafety Tipsの機能を紹介してきました。アプリは2014年(平成26年)から提供を開始しており、今年でリリース7年目となっています。その間、その機能は大きく進化しています。
リリース年月日 | バージョン | アプリの変更・追加内容 |
2014/10/24 (平成26年) | 不明 | ・日本国内における緊急地震速報および津波警報を英語でプッシュ通知 ・避難フローチャート ・コミュニケーションカード ・リンク集 |
2015/8/26 (平成27年) | 不明 | ・地震、大雨や波浪などの気象情報、噴火情報を追加 ・プッシュ通知の対象となる情報に気象特別警報を追加 ・中国語(簡体字、繁体字)、韓国語に対応 |
2017/3/17 (平成29年) | 不明 | ・外国人受入可能な医療機関情報、事前学習、避難所情報、緊急連絡先情報などの情報を新たに提供 ・言語を選択する機能の新設 ・地震発生時の震源地周辺の震度表示 ・フローチャート、リンク先の充実など |
2018/3/20 (平成30年) | 不明 | ・弾道ミサイル発射等の国民保護情報、避難勧告・指示情報等を新たに提供 |
2019/9/13 (令和元年) | 3.2.0 | ・スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、タイ語、インドネシア語、タガログ語、ネパール語を追加。11か国語に対応 |
2019/12/6 (令和元年) | 3.3.0 | ・避難勧告等を多言語によりプッシュ通知 |
2020/3/17 (令和2年) | 3.4.0 | ・クメール語、ビルマ語、モンゴル語を追加。14か国語に対応 |
2020/8/4 (令和2年) | 3.5.0 | ・熱中症情報のプッシュ通知(熱中症警戒アラート(試行)に対応) |
2020/10/23 (令和2年) | 3.6.0 | ・台風情報の提供 |
2020/12/17 (令和2年) | 3.7.0 | ・週間天気の表示に対応 ・その他軽微な修正 |
2021/3/15 (令和3年) | 3.8.0 | ・熱中症情報画面の内容改善 ・熱中症についての解説追加 |
2021/5/25 (令和3年) | 3.8.1 | ・熱中症警戒アラートの機能と文言を更新 |
2021/5/27 (令和3年) | 3.8.2 | ・軽微な不具合修正 |
(注1) 2014/10/24から2020/10/23までのリリース情報は観光庁の報道発表またはトピックス情報から取得。バージョンは不明です・・・
(注2) 2020/12/17以降のリリース情報はApp Storeのアップデート履歴から取得
では、Safety Tipsが世に出るきっかけは何だったのでしょうか。このことを調べるとあの2011年(平成23年)に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)、3.11がきっかけとなったことが分かります。
国土交通省の外局として観光庁(Japan Tourism Agency、JTA)という組織があります。観光庁はその名の通りあらゆる観光政策の促進や支援をするのが仕事です。そして「海外との観光交流を拡大すること」もその重要な仕事の一つです。
これを実現するための施策として「訪日外国人旅行者の受入環境整備」があります。
上記の施策について検討するため、平成22年度から平成25年度まで検討会が設置されました。
この検討会において、震災発生後、TIC(Tourist Information Center、JNTOが運営する観光案内所)への電話問い合わせ件数が大幅に増えていたことが分かっています。つまり日本を訪れた外国人の方に対する災害時の情報提供の必要性が明確になった事例と言えます。
この問題に対応するために「災害時における訪日外国人旅行者への情報提供のあり方に関するワーキング・グループ(WG)」が新たに設置され、
「アプリを利用して訪日外国人旅行者が自ら情報を入手しようとするかどうかに関係なく、災害の初動対応に必要とする情報(地震速報等)を自動的に発信する仕組みを構築することが有効である」
といった提言が取りまとめられました。また、2014年(平成26年)に開催された「観光立国推進閣僚会議」で決定された「観光立国実現に向けたアクション・プログラム 2014」においても「外国人旅行者の受入環境整備」の項目があり、<災害対応>としてIT(アプリ)を活用した訪日外国人旅行者への情報提供システムの構築が盛り込まれています。
このような経緯があり、Safety Tipsが開発、リリースされることとなりました。
多言語対応などの様々な取り組みを反映
災害などの緊急時に知りたい情報は、自国以外の国にいる時には母国語の情報で手に入れたいと考えるのが自然ではないかと思います。実際、検討会で行った調査でもそのような声が多かったそうです。
最新バージョンのSafety Tipsでは、実に14か国語に対応していますが、この背景にも先のアクション・プログラムが関係しています。本来は昨年2020年(令和2年)に実施される予定だった東京オリンピックに向けたインバウンド振興策が記されており、外国人旅行者が利用する施設の多言語対応などについての記述が見られます。
これを受けて関係する省庁などが多言語対応の取り組みを始め、それがアプリにも反映されているということです。参考までに、関係する取り組みには以下のようなものがあります。
関係するバージョン | 各省庁などの取り組み |
2014/10/24 (注1) | ・観光立国実現に向けたアクション・プログラム 2014(観光庁) |
2015/8/26 (注1) | ・緊急地震速報・津波警報の多言語辞書(気象庁) |
2018/3/20 (注1) | ・Jアラートにより配信する国民保護情報の多言語配信の開始(消防庁) |
3.2.0 | ・外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(関係閣僚会議) ・防災気象情報の11か国語における提供範囲の拡大(気象庁) ・消防災第78号・消防国第48号・消防運第19号 防災・気象情報及び国民保護情報の多言語配信に係る対応言語の拡大について(消防庁) |
3.3.0 | ・避難勧告等に関する多言語辞書(14か国語)(総務省) (注2) |
3.4.0 | ・外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(関係閣僚会議) ・外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策の充実について(関係閣僚会議) ・外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(改訂)(関係閣僚会議) ・多言語辞書データ(気象庁) |
3.5.0 | ・「熱中症警戒アラート(試行)」の先行実施について(環境省) ・「熱中症警戒アラート(試行)」が始まります(気象庁) |
(注1) アプリのバージョンが不明なものについては、リリース年月日を示しました。
(注2) 総務省の「情報難民ゼロプロジェクト」のサイトです。一番下に多言語辞書データのリンクがあります。
まとめです
今回の防災アプリは「Safety Tips」を取り上げました。
主に日本を訪れる外国人旅行者向けに開発された多言語対応の情報通知アプリです。
訪日外国人旅行者数の推移は3.11以降一気に増えて、新型コロナウイルスの影響が出る前の2019年には3188万人を記録し、3000万人を超えています。
そのような中、災害が発生した時に必要な情報を母国語で提供できるアプリがあることは、外国人旅行者にとって大きな恩恵があることだと思います。
またアプリの開発背景にある国の多言語対応の取り組みも、最近は電車内のアナウンスだとか、標識、地図の表記などにはっきりと現れて来たように思います。将来災害が起こった時に、避難所に外国人と共に過ごすことが特別なことでは無くなってくるのかも知れません。
Safety Tipsはアップデートで内容が充実してきているように思いますが、まだまだ改善の余地があるアプリだと思います。これからの展開に期待です。
現在は世界的な新型コロナウイルスの流行によって観光にも大きな制限が出ています。しかし、また多くの観光客が日本を訪れる時が必ずやって来ます。その時、Safety Tipsが安心な旅行のお供になることを願っています。