こんにちは!管理人のアカツキです。
今回は「強震モニタ」を取り上げてみたいと思います。
強震モニタとは?
リアルタイムで地震の伝わり方がわかります
「強震モニタ」とは、防災科学研究所が提供するリアルタイム震度情報です。
揺れの強さが色分けされて地図に表示されるので、地震の伝わり方が視覚的にわかりやすいです。
ブラウザからアクセスできるため、PCでもスマホでも同じ情報を手に入れることができます。
実例を見てみよう(2022/6/17 追記)
実際に強震モニタがどのように見えるのでしょうか?実例をご覧ください。
- 地震発生時刻
- 2022年6月17日
0時51分ごろ
- 2022年6月17日
- 震源などの情報
- 徳島県南部
- M4.8
- 深さ50km
- 最大震度4
(徳島県阿南市)
こちらが本日未明に発生した徳島県南部を震源とする地震の強震モニタです。
地震発生後、地面の色が変わり、それが西日本を中心に同心円状に広がっていくことが見えるかと思います。
後にも少し触れていますが、地震波のスピードは非常に速く、1秒間に数km進むレベルです。時間を切り取り、アニメーションにしてみるとその広がり方がよくわかりますね。このように、地震による揺れの大きさや伝わりが視覚化されるのが強震モニタのすごい所です。
つまり、地震を「見る」ことができるのです。
テレビなどで緊急地震速報が発表された場合、その該当地域が表示されます。しかしその地域に具体的にどのくらいの時間で、どのくらいの大きさの揺れがやってくるのか、はっきりしない部分があります(もちろん緊急地震速報ですから数十秒で、直下型であれば間髪入れず揺れがやってきます。身を守る行動はすぐに取らなければなりません。前提としてそのような時間スケールであることは踏まえておかなければなりません)。
しかし、強震モニタがあればさらにその判断をはっきりさせることに繋がっていくでしょう。結果としてより命を守ることができる可能性が高まっていくことになると思います。
テレビの緊急地震速報は現状テロップのみです。近い未来、映像の強みを利用して強震モニタも同時に放送したり、地域ごとに後何秒で揺れがくるのかなどを示せるようになってほしいと考えています。
さて、そんな強震モニタを運用している防災科学研究所とはどのような研究所なのでしょうか。少し見ていくことにしましょう。
陸地から海底まで!防災科研の観測ネットワーク
防災科学研究所とは?
防災科学研究所(防災科研、NIEDとも)は、防災に関する科学技術の研究を行う国立研究開発法人です。所管は文部科学省です。
“SCIENCE FOR RESILIENCE”をキャッチフレーズに、災害に強い社会を目指して自然災害に関する研究に取り組んでいます。
この「RESILIENCE(レジリエンス)」という英単語は、近年色々な所で耳にするようになってきました。
レジリエンスとは災害に耐え、速やかに復旧を実現する力
レジリエンス(Resilience)は「復元力」「回復力」を意味する言葉です。
自然科学、特に物理分野では「弾性」という意味で使われることが多いでしょう。
弾性とは、力を加えて変形した物体が、力を取り除くと元の形に戻る性質を言います。
ただ英語としては”Elasticity”が適当です。
“Resilience”は、物体が元の形に戻ろうとする回復力に重きを置いた表現です。
また、心理学では与えられたストレスから立ち直る能力、つまり折れない心といった意味になります。
防災におけるレジリエンスとは、災害が発生してもその被害をできるだけ軽く抑え、速やかに復旧するための能力、と言えるでしょう。
MOWLASで網羅する
防災科研では、これまで様々な地震観測網を整備してきました。
また、海洋開発研究機構(JAMSTEC:ジャムステック)も今後南海トラフで起こると想定されている東南海・南海地震に備えてDONETと呼ばれる観測網を構築し、運用しています。
このDONETですが、平成28年4月に防災科研に移管されています。
そして平成29年11月に防災科研の観測網とDONETを合わせ、「陸海統合地震津波火山観測網」として本格的な統合運用が開始されました。
MOWLAS(モウラス)はこの観測網の愛称として名付けられました。
ここまで見ています!MOWLASのネットワーク
ではMOWLASの観測網にはどんなものがあるのでしょうか。
実はこんなにあるんです!
- Hi-net(高感度地震観測網)
- 人が感じることができない微弱な揺れを正確に記録
- 全国約800か所に高感度地震計を設置
- 深さ100~3500mの井戸の底に設置されている
- K-NET(全国強震観測網、Kyoshin Network)
- 被害を及ぼすような強い揺れを振り切れることなく正確に記録
- 全国約1000か所以上に観測点を持つ
- 全国を約20km間隔でカバー
- KiK-net(基盤強震観測網、Kiban Kyoshin Network)
- Hi-netとともに整備された強震観測網
- 全国約700か所に配置
- 地表と地中両方に強震計が設置されている
- F-net(広帯域地震観測網)
- 幅広い周期の地震動を記録できる
- 全国70か所に広帯域地震計を設置した観測網
- 奥行き数10mのトンネルの奥に地震計を設置
- V-net(基盤的火山観測網)
- マグマの蓄積や移動から噴火まで一連の過程を観測する
- 全国の主要な16活火山、55か所に配置した観測網
- 地震計や傾斜計、広帯域地震計、GPSなどを設置
- S-net(日本海溝海底地震津波観測網)
- 海域で発生する地震や津波を観測する
- 北海道沖~千葉県房総半島沖の海底に観測装置を150点設置
- 東日本大震災を受けて設置
- DONET(地震・津波観測監視システム)
- 南海トラフで発生する地震や津波を観測する
- 南海トラフ海域の熊野灘と紀伊水道沖に51か所の観測点を設置
- 強震計や水圧計など多くのセンサーからなる観測装置
これら観測網を地図に表したものが下の図になります。
ものすごいネットワークですね・・・。
日本の地震はこのMOWLASによって日々観測データが取られ、防災研究に役立てられています。
また、データはインターネットで公開されていますので誰もが情報を得ることができます。
ただし、ユーザー登録が必要なものもあるので、その点は注意してください。
これらのうち、2のK-NETと3のKiK-netが強震モニタで使われている観測ネットワークです。
強震モニタを使ってみよう
起動はワンクリックまたはワンタップ
では実際に強震モニタを使ってみましょう!
起動は簡単!まずはこちらから防災科研のサイトに進んでください。
そして「強震モニタ」をクリックあるいはタップするだけです!
(Yahoo!でも見ることができるようになりましたが、地表のリアルタイム震度のみ表示されます)
起動すると、上のような画面が出てきます。
基本的にはカスタマイズする必要はなく、そのまま使えます。
揺れは1秒ごとに更新されて、その揺れに対応する色が地図上の観測点に付きます。
リアルタイム震度や加速度など、10種類の指標から選べますが、専門的なものが多いです。
ですので、標準で選択されているリアルタイム震度指標で問題ありません。
ところで実際に画面を見ると、常に点灯している場所がありますね。
これは車や列車、工場、工事などの生活振動を拾っているためです。
強震モニタ玄人にもなると、朝、昼、夜、深夜帯で揺れ(色の付き方)の違いも見るのだとか。
実際に昼と深夜では明確に違いが出て興味深いですよ。
機器の異常などで赤が一点だけ点灯する、ということもたまに起こります。
いきなり出るとびっくりすると思います。データ全体を見て冷静に状況を判断するようにしましょう。
観測点は「地表」「地中」から選べます。
生活の中で「あれ?何か揺れているかも?」と思ったことがあるかも知れません。
そのような時は、地中を見ることで実際に揺れているか確認できますよ。
「九州」ボタンを押すと九州地方の観測点を拡大表示できるようになっています。
これは熊本地震を受けて追加された機能で、現在も継続して提供されています。
背景の切り替えも可能です。より見やすくグレーのダークモード風に切り替えられます。
緊急地震速報にも対応しています
気象庁から緊急地震速報を受信するとチャイムが鳴り、その情報が表示されるようになっています。
この時「推定震度」をONにすることで、予測される震度が色分けされて地図に表示されます。
「予測円」をONにすると、地震が起こることで発生する二つの波(P波、S波)の伝わる予測もモニタ上に表示されます。
私も何度か見たことがあります。
P波は1秒間に約5km、S波は1秒間に約3kmの速さで進むと言われます。
つまり、1分間でP波は約300km進みます。
これは東京から新潟県~愛知県~宮城県までの距離に相当するんですね。
ものすごい速さで日本を進む地震波を実感できると思います。
長周期地震動モニタも提供されています
地震モニタは一つだけではありません。
長周期地震動を可視化する長周期地震動モニタも提供されています。
こちらも強震モニタと同様に、強震観測網の長周期地震データを利用しています。
長周期地震とは、地震波の周期が長い揺れを言います。
震源が浅くて大きな地震ほど発生しやすく、遠くまで伝わりやすいという特徴があります。
特に高層ビルでは、その周期によっては「共振」と呼ばれる現象が起こり大きく、長く揺れてしまうことがあります。
そのため気象庁では長周期地震に対して通常の震度階級ではなく「長周期地震動階級」という指標を使用しています。
さらに長周期地震動について知りたい方は気象庁の解説ページをご覧ください。
やや専門的な内容になっていますが、分かりやすく解説されていると思います。
まとめです
リアルタイムで揺れを表示する「強震モニタ」を見てきました。
実際にその場で揺れが起こっていることが確認できますので、常にスマホのホーム画面に登録しておくと役に立つ場面が出てくるはずです。
また、Youtubeで強震モニタとほかの地震情報を組み合わせた配信を行っている方もおられます。
有効に情報を活用し、もしもの時の行動に活かしていきましょう!