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能登地方の群発地震ー今わかっていることー

防災豆知識

こんにちは、管理人のアカツキです。
今回お送りする防災お役立ち情報は「石川県能登地方の群発地震」です。

今年6月、石川県の能登地方で最大震度6弱を記録する大きな地震が発生しました。実は能登地方では、数年前から連続した地震活動が起こっています。

一つの地域で連続して起こる地震は群発地震と呼ばれており、過去には長野県の松代町(現在は長野市)で起こった松代地震が知られています。

今回の記事では、能登地方で起こっている群発地震について、現在どのようなことがわかっているのか、そしてどのような原因が考えられるのか、について見ていくことにしましょう。

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群発地震はいつから起こっているの?

2018年(平成30年頃)から増え始めています

まずは地震のデータを確認してみましょう。気象庁では、毎月一回「地震・火山月報(防災編)」を発表しています。

こちらの令和4年6月版において、能登群発地震の特集がなされています(特集1)。それによると、地震回数が増え出したのは2018年(平成30年)からとなっています。

地震活動は、2021年(令和3年)7月頃からさらに活発になっています。その結果、今年2022年(令和4年)6月30日までに震度1以上を観測した地震回数は次のようになっています。合計は182回となっており、二ケタを優に超えているのですね。

能登半島の地震回数表
能登半島の地震回数表
能登半島の地震回数グラフ
能登半島の地震回数グラフ

出展 気象庁 「令和4年6月 地震・火山月報(防災編) 特集1 2022年6月19日 石川県能登地方の地震」55~56ページ

そして表にもありますように、今年6月19日には最大震度6弱を記録する地震も発生しています。また規模の大きな地震も増えてきているように思われます。

どんな場所で起こっているの?

ではこの地震は能登半島全体で起こっているのか?というとそうではありません。半島の北東側にある珠洲(すず)市の近辺で主に発生しています。

そして興味深いことに、地震の分布は大きく四つのエリアに分かれていることも見えてきています。

群発地震の分布(1)
群発地震の分布 (1)
出展 日本地震学会 広報誌「なゐふる」129号(2022年5月) 7ページ


上の図のように、北側、東側、西側、南側とかなりはっきり地震が分布していることが読み取れるかと思います。これらはそれぞれ北側クラスター、東側クラスターなど〇〇クラスターと呼ばれているようです。

また図からもう一つ言えることは、これらの地震クラスターは同じ時期に同じように発生したのではなく、時間発生しているということです。

群発地震の分布(2)
群発地震の分布 (2)
出展 石川県能登地方の地震活動の評価(令和4年7月11日公表)(PDF) 13ページ

こちらの図は、先月政府の地震本部から発表された資料になります。タイトルが付けられておりませんが、内容から先ほどと同じく地震の分布を示しており(、(a))、その深さについて時系列で各クラスターを合わせたもの(、(b))、時系列クラスター別に分けたもの(、(c)~(f))になるかと思います。

時系列では2020年(令和2年)12月1日を0日としておそらく580日くらいまでデータが入っているように見えます。580日ですと大体1年と7か月(580日≒365日+210日≒1年+7か月)ですので、今年2022年(令和4年)の6月末までは網羅されているのではないでしょうか。

そして先ほどの図と合わせて見てみますと、南側クラスター(cluster-S)で15kmより深いところでも地震が発生しています。そして他のクラスターでは10km~15kmと南側より少し浅い部分で地震が起こっていますね。

なぜ群発地震が起こっているの?

流体が影響?

先ほど見てきたように、能登半島の群発地震は震源が時間とともに変わっていました。これはどのようなことが原因となって起こっているのでしょうか。

先ほど取り上げました地震本部の「石川県能登地方の地震活動に関する「地震調査委員長見解」(令和4年7月11日公表) (PDF)」ではこのことについて解説がなされています。それによると

  1. 球状圧力源
  2. 開口割れ目
  3. 断層すべり

といったものが考えられるということです。ただ現在のデータや解析の結果からは原因を一つに特定することができないとも述べられています。

一方で、地震活動エリアで電気の流れやすさ(電気伝導度)が調べられており、より電気を通しやすい領域が存在しているのでは?と考えられています。

電気が流れやすいということは、そこに水など電気を通しやすいものがあるということです。さらに南側クラスターの最も深い場所付近には、地震波を反射する領域が推定されているとも記されています。

そして能登半島北部の温泉水を分析したところ、地下のマグマが関与した積極的な証拠は見つかっていないということです。

これらの結果などを総合して考えたとき、一連の地震活動には何らかの流体が関わっているのではないか、というのが地震調査委員長による見解です。

しかし具体的な原因の特定にはまだまだ調査が必要とされています。

松代地震も流体が原因だった?

ところで、流体が原因と思われる地震は過去に実例があります。それが松代群発地震と呼ばれるものです。

松代群発地震は、長野県の松代町(まつしろまち、現在は長野市)で1965年(昭和40年)8月3日に発生した3つの地震が端緒となり、1967年(昭和42年)の末まで続きました。実に2年以上も松代は揺れ続けていたことになります。

さらに驚くべきはその地震回数です。震度1以上の地震に限定してもその回数はなんと6万回以上を記録しています。1日単位で見てもその回数は驚くべきものでして、最多を記録した1966年(昭和41年)4月17日には震度1以上を585回観測しています。数分に1回のペースで地面が揺れていたことになります。

松代群発地震の回数グラフ
松代群発地震の回数グラフ
出展 長野市立博物館「博物館だより 第94号」1ページ
  • 第1期 1965年8月~1966年2月
  • 第2期 1966年3月~1966年7月
  • 第3期 1966年8月~1966年12月
  • 第4期 1967年1月~1967年5月
  • 第5期 1967年6月~現在

(出展 長野市立博物館「博物館だより 第94号」1ページ)

上の図は、地震活動を日別に見たグラフと活動期間です。このように地震活動は大きく5つの期間に分けられています。第2期が最も活発な時期になっていることがわかります。

なお、この地震によって建物の被害が発生していますが、幸いなことに人的被害はありませんでした。

流体がもたらした地震ー水噴火モデルー

では流体とは具体的に何だったのか?ということについてですが、群発地震の原因として考えられたのが、地下にある高圧の水であると考えられています。

そして高圧の水による一連の地震モデルは水噴火モデルと呼ばれています。

水噴火モデルの模式図
水噴火モデルの模式図
出展 長野市立博物館「博物館だより 第94号」3ページ

水が地下から岩盤を割って侵入することで地震を起こし、最後には地表に出てくるというものです。実際に群発地震の期間中、温泉が自噴したり町の様々な場所で水が湧き出していることが記録に残っています。

松代町加賀井にある一陽館旧源泉の温泉井戸の自噴
松代町加賀井にある一陽館旧源泉の温泉井戸の自噴
出展 松代地震観測所「松代群発地震50周年特設サイト 温泉井戸の自噴の写真一覧
(表題は原文そのままです)
湧水による田畑の被害
湧水による田畑の被害
出展 松代地震観測所「松代群発地震50周年特設サイト 湧水による被害写真一覧
(表題は原文そのままです)

原因を調べる取り組み

以上、能登半島で起こっている群発地震についてその概要を見てきました。地震のメカニズムについては一応の見立てがなされているけれども、さらなる調査が必要である状況ということが言えそうです。

そしてその調査については先月7月22日、文部科学省からプレスリリースが出されています。

能登半島の群発地震について、研究費が助成されるとの内容になっています。研究計画の概要(PDF)によれば、次のような調査が行われるとのことです。

  1. 陸域地震観測による群発地震発生メカニズムの解明
  2. 測地観測による地殻変動の調査
  3. 陸域・海域電磁気観測の実施・解析
  4. 重力観測による地殻流体挙動の解明
  5. 温泉成分測定による流体起源の調査
  6. 活構造調査による長期間地殻変動の解明
  7. 強震観測による地盤振動調査および被害調査

いずれも難しそうなテーマですね…。ですが地震のメカニズムを調べていく上では欠かせない調査なのだと思います。

また、研究はすでに開始されているようで、上のテーマ5について地元のテレビ局(HAB北陸朝日放送)が報道しています。

まとめです

今回の防災情報では能登半島の群発地震を取り上げました。すでに地震活動が始まって4年が経過していますが今年になって最大の地震が発生しており、その活動が活発化しています。

その原因は地下にある流体とも言われていますが、まだよく分からない部分も多いようです。大学などの調査研究がどのように実を結ぶのか、これからも見ていきたいと思います。

また、これからも地震活動は続くと考えられています。もちろん北陸に限らず地震は全国どこでも発生します。しっかりと地震、特に家具の転倒など耐震対策も今一度見直していきましょう。

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