2024/11/18 地域の防災リーダー「防災士」(前編) を投稿しました

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「キキクル」で危機が来ることを確認!ーその実例ー

防災豆知識

こんにちは、管理人のアカツキです。今回の防災お役立ち情報では「キキクルの実例」を取り上げます。

最近テレビの気象情報などで、気象予報士の方がキキクルの画面を映して解説する光景が珍しいものではなくなってきました。これはその防災情報としての重要性が浸透しつつあるからではないか、そう思っています。

そこでキキクルの重要性を、その実例を見てみることで改めて確認してみたいと思います。

ちなみにキキクルそのものについても解説記事を投稿しています。こちらもぜひご覧ください。

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2022年6月から黒(警戒レベル5相当)が追加

まずは簡単におさらいをしてみましょう。そもそもキキクルって何?ということですが

  • 大雨による土砂災害、浸水害、洪水害の危険度を色分けして地図上で確認する防災情報

を指し、気象庁が昨年2021年(令和3年)3月から運用を開始しています。「危機が来る」からキキクルという愛称が付けられました。

キキクルの前身は、土砂災害警戒メッシュ情報と呼ばれるもので、2013年(平成25年)から運用が開始されていました。その後、浸水害と洪水害の危険度分布が加わり、現在に至ります。

そして今年6月末から警戒レベルに対応した新たな色分けとして「黒」が追加され、現在は次のような区分になっています。

新キキクルの色と意味
新キキクルの色と意味

キキクルの実例を見てみよう

新たな区分で運用が始まって3か月が経過したキキクルですが、私が確認する限り、すでに最も危険な状態である「黒」が度々見られる事態になっています。

そこでその実例を確認し、実際に「黒」が現れた地域でどのようなことが起こったのかを見ていきたいと思います。次の事例について取り上げました。

  1. 埼玉県(2022年7月12日)
  2. 新潟県(2022年8月3日、4日)
  3. 宮崎県(2022年9月18日、19日)
  4. 静岡県(2022年9月23日、24日) ※2022/10/14 追加

(1) 埼玉県(2022年7月12日)

1日で月降水量平年値の2倍を超える雨を観測

最初に埼玉県の事例です。この日は

  • 関東の上空に寒気
  • 日本海の低気圧に向かって暖かく湿った空気

が入ったために大気の状態が不安定になりました。その影響で雷雨が発生し、特に鳩山町(はとやままち)を中心に豪雨となりました。

気象庁 東日本地域の「今後の雨(降水短時間予報)」
2022/7/12 10:00~22:00までの様子

こちらがその時の降水の様子です。埼玉県付近を見てみますと、17時過ぎ頃から非常に激しい雨が降り出していることが確認できます。

熊谷地方気象台の資料によると、実に9回もの記録的短時間大雨情報が発表されています。

記録的短時間大雨情報の履歴
記録的短時間大雨情報の履歴
出展 熊谷地方気象台
令和4年(2022年)7月12日から13日にかけての大雨に関する気象速報(PDF)」22ページ


続いて鳩山町近辺の降水量、キキクルの変化を見てみます。

気象庁 埼玉県鳩山町周辺の「今後の雨」と「キキクル(土砂、浸水、洪水)」の様子
今後の雨:2022/7/12 10:00~22:00
キキクル:2022/7/12 16:30~22:30

時間とともに降水量が多くなり、それに伴って特に土砂キキクル浸水キキクル紫色の部分が現れていることがわかります。

さらに20時頃になると、浸水キキクルでは災害が切迫していると判断される黒色部分が出現しています。この時、該当のエリアではすでに災害が発生していてもおかしくない状態になっていました。

その後、実際に災害が発生したことがニュースで取り上げられています。


こちらの映像をご覧になったという方も多いかと思います。鳩山町では道路が冠水して車に人が取り残されるといった浸水被害も起こりました。

その他、川の水が溢(あふ)れたり、土砂の流出も至る所で発生したことが確認されています。

河川・土砂の被害まとめ
河川・土砂の被害まとめ
出展 埼玉県庁「令和4年7月12日の大雨による被害状況について(第9報)

浸水キキクル警戒レベルが最大の5に相当する黒色が出現そのエリアで冠水による被害が発生したということになります。

(2) 新潟県(2022年8月3日、4日)

前線活動の活発化による大雨

続いて新潟県の事例です。7月末に相次いで発生した台風5号台風6号が、月が替わった8月1日に熱帯低気圧に変わりました。

これらの台風は南から暖かく湿った空気を持ち込みました。その結果、大気の状態が不安定になり、前線活動が活発化し、大雨になったという背景があります。

当時の天気図と衛星画像
当時の天気図と衛星画像
出展 新潟地方気象台
令和4年8月3日から4日にかけての大雨に関する新潟県気象速報(第3報) (PDF)」3ページ

村上市(むらかみし)や関川村(せきかわむら)、胎内市(たいないし)、阿賀町(あがまち)で猛烈な雨が観測されています。

関川村の下関(しもせき)では、統計を取り始めて以来最大となる569.0ミリの降水量を観測しました(8月3日3時から8月5日5時まで)。

次にキキクルを見てみましょう。新潟県の荒川下流域の様子になります。

気象庁 新潟県荒川下流域周辺の「雨雲の動き」と「キキクル(土砂、浸水、洪水)」の様子
今後の雨:2022/8/4 0:30~3:15
キキクル:2022/8/3 21:10~8/4 3:00

位置関係を確認します。荒川の周囲には先ほど名前を挙げた

  • 村上市(荒川の北側)
  • 関川村(荒川の東側、上流側です)
  • 胎内市(荒川の南側)

があります。

まず雨雲の動きを見てみますと、まさに荒川に沿って次々と、途切れることなく非常に強度の強い雨雲が流れ込んでいることが言えます。

そして8月4日になると、土砂、浸水キキクル黒色が出現している様子が見えるかと思います。この時間、猛烈な雨が常に降り続けていました。

新潟県庁によれば、この大雨でがけ崩れ土石流地すべりなどが合計15か所で発生したとのことです。また農地に土砂が入ったり、冠水するという被害も報告されています。

さらに浸水による影響は農地だけではなく、トラクターなどの農業機械にも及んでおり、393台が被害を受けています。

その被害規模の大きさから、9月4日には首相が村上市を訪れて災害現場を視察しています。

こちらの事例においても、キキクルで黒色が出現した地域を中心に被害が発生していることが読み取れるかと思います。

(3) 宮崎県(2022年9月18日、19日)

大型で猛烈な台風14号が上陸

続いて宮崎県の事例です。まず最初にキキクルなどの様子を見てみましょう。

気象庁 九州地方の「雨雲の動き」と「キキクル(土砂、浸水、洪水)」の様子
今後の雨:2022/9/18 18:30~21:30
キキクル:2022/8/3 15:20~21:20

これは9月18日夜の九州地方の様子です。大きく渦巻く反時計回りの雨雲が確認できると思います。台風14号(ナンマドル)によるもので、19時頃に鹿児島県に上陸しています。

台風14号は17日に中心気圧が910hPa(ヘクトパスカル)と急成長を遂げ、大型で猛烈な台風となりました。気象庁では特別警報級の台風として警戒を呼びかけていました。

気象庁からの注意喚起
気象庁からの注意喚起情報
出展 「台風第14号の今後の見通しについて~台風要因の特別警報発表の見通し~資料(PDF)2ページ

台風は鹿児島県に上陸後、九州を北上していきました。上陸時の中心気圧は935hPaとやや弱体化したものの、台風の強さとしては「非常に強い」勢力で通過していきました。

そして土砂災害のキキクルを見てみると、宮崎県の西都市(さいとし)、都城市(みやこのじょうし)付近で黒色が現れています。

特に都城市近くの三股町(みまたちょう)では、土砂崩れが発生して建物が流され、一人が土砂に巻き込まれました。この件について、陸上自衛隊に宮崎県から災害派遣要請があり、行方不明者が発見されています。

また、都城市より少し北北西に行った所に高原町(たかはるちょう)があります。ここでは浄水場の水源の一つが土砂崩れによって使用できなくなってしまいました。このため断水が発生。陸上自衛隊に災害派遣要請があり、給水支援活動が行われました。

断水は9月28日午前6時に解消されましたが、台風による被害は大きな爪痕を残したと言えます。

これらの事例においても、土砂災害の危険度を示す土砂キキクル黒色が出現し、実際にそこに近い地域で土砂崩れが発生していることがわかりました。

(4) 静岡県(2022年9月23日、24日) 2022/10/14 追加

台風15号による断水、停電が発生

先ほどの宮崎県のケースから一週間も経たない間に、今回取り上げた静岡県の事例が発生しました。こちらも台風、しかも14号の次に発生した15号(タラス)によるもので、連続して台風被害が発生したということになります。

まずは当日の雨雲の動きを見てみます。

気象庁 東日本地域の「雨雲の動き」の様子
今後の雨:2022/9/23 17:45~9/24 2:10
気象庁 静岡県(主に西部、中部)の「雨雲の動き」の様子
今後の雨:2022/9/23 17:50~9/24 2:10

ご覧のように、静岡県を中心に猛烈な雨が降り続いていたことがわかります。線状降水帯も発生していますね。静岡地方気象台の資料によれば、この猛烈な雨は23日18時から24日4時頃にかけて降り続いたとのことです。

台風の接近によって非常に湿った空気が入って来たためですが、経路を見てみますと23日の9時に台風になり、静岡県に接近して猛威を振るった後、24日の9時に温帯低気圧に変わっています。この24時間の間に台風15号は大きな被害を及ぼしていったことになります。

台風15号の経路図(速報解析)
台風15号の経路図(速報解析)
出展 静岡地方気象台「令和4年台風第15号に関する静岡県気象速報 (PDF)
3ページ「(2) 気象の概況」

また、時を同じくして23日の21時10分頃に静岡県の御前崎市(おまえざきし)から牧之原市(まきのはらし)にかけて突風被害が発生しています。気象台によれば、この突風は竜巻の可能性が高いということです。台風がもたらした影響と考えられています。
(9月23日に静岡県御前崎市から牧之原市で発生した突風の現地調査結果について(PDF))

雨の件に戻ります。降水量の凄まじさは記録からも読み取れます。たとえば12時間降水量の日最大値は、7地点で統計を取り始めて以来、観測史上1位の値となりました。

日最大12時間降水量の状況
日最大12時間降水量の更新状況
出展 静岡地方気象台「令和4年台風第15号に関する静岡県気象速報 (PDF)
19ページ「(3) 極値更新状況」

この豪雨によって、静岡市葵区の足久保口組(あしくぼくちぐみ)で山崩れが発生し、中部電力パワーグリッドが管轄する送電鉄塔2基が倒壊しました。

このため、大規模な停電が発生。最大時には約119,000戸が停電したと報告されています。

台風第15号による被害状況(1)
台風第15号による被害状況(1)
出展 静岡県公式ホームページ「台風15号による被害への対応
台風第15号による被害状況について【第32報】(10月13日10時00分時点)(PDF) 3ページ

ライフラインへの被害は停電に留まらず、静岡市清水区などで断水が発生しました。区を流れる興津川(おきつがわ)の取水口に大量の流木や土砂が流れ込み、取水ができなくなってしまったためです。

陸上自衛隊が災害派遣要請を受けて土砂などの除去や給水活動を行いましたが、これについては別の側面からも注目を集めていたように思います。

県の資料によれば、清水区の断水件数は最大約63,000戸と報告されています。

台風第15号による被害状況(2)
台風第15号による被害状況(2)
出展 静岡県公式ホームページ「台風第15号による被害状況について【過去分】
台風第15号による被害状況について【第29報】(10月7日10時00分時点)(PDF) 3ページ

キキクルは広い範囲で黒が出現

キキクルの移り変わりは次のようになっています。

気象庁 静岡県(主に西部、中部)の「キキクル」の様子
キキクル:2022/9/23 14:40~9/24 2:00

雨の勢いが増すにつれ、県の西側から東側に向けて土砂災害、浸水害、洪水の危険度すべてが急激に悪化していることが見て取れるかと思います。

そして23日22時を過ぎた頃、浸水キキクルで最大危険度である黒色が出現し始めました。黒色のエリアは、浜松市や磐田市、藤枝市、焼津市、静岡市などを含んでいるように見えます。

県の資料によれば、床上浸水、床下浸水が合わせて8,300棟ほど発生しています(10/13 10:00時点)。その発生件数が多い市町と、キキクルで黒が現れたエリアは関連があるように思えます。

台風第15号による被害状況(3)
台風第15号による被害状況(3)
出展 静岡県公式ホームページ「台風15号による被害への対応
台風第15号による被害状況について【第32報】(10月13日10時00分時点)(PDF) 1ページ

また土砂キキクルにおいても、日付が変わる頃から黒色が出現しています。先ほど山崩れによって送電鉄塔の倒壊が発生したことを述べましたが、その発生地域である足久保口組もまた、土砂キキクルの黒色エリアに近い場所にあったことが伺えます。

今回の事例からも、キキクルで黒色が出現した地域では災害が発生していることが見えてくるのではないでしょうか。

まとめです

今回の防災お役立ち情報では「キキクルの実例」を取り上げました。

記事内で四つの事例を取り上げましたが、いずれも最大危険度のエリアが出現した地域やその近くでキキクルに関連付けられる災害が発生していることが読み取れたかと思います。

また9月23日から24日にかけて、台風15号(タラス)の影響によって静岡県で大きな浸水被害が発生しています。

こちらについてもキキクルの確認をしていきたいと思っています。(10/14 追加しました)

季節は秋から冬に移り変わろうとしています。しかし台風は10月にも多く発生しており、上陸することもあります。3年前の2019年10月に令和元年東日本台風(19号)が日本に上陸して大きな被害をもたらしたことは、記憶に新しいことと思います。

川の水量が増し、洪水の被害などが起こりやすくなる出水期はもう少し続きます。台風に限らず、大雨にはまだまだ警戒が必要です。

キキクルは私たちが自らの判断で避難を判断する防災情報です。防災グッズの備えももちろんですが、情報の収集も大切な防災対策と言えます。ぜひキキクルを活用してみてください。

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