こんにちは、管理人のアカツキです。
今回の防災グッズは「住宅用消火器」を取り上げます。
学校や職場、ショッピングモールなど至る所にありますので、消火器の存在自体はよく知られているところですが、ではご家庭において消火器は備えられているでしょうか。
過去の災害の事例も踏まえ、ここではいざという時のための対策の一つとして、住宅用消火器について見ていきましょう。
災害時の火災:東日本大震災の記録から
まずは実際の災害のデータから、どのようなものが火災を引き起こすのか、東日本大震災を教訓として確認してみます。
内閣府の防災情報のページには、年度ごとに国が行った災害対策などの取組や、防災に関して取った措置などがまとめられた防災白書が公開されています。
そして平成23年版(2011年)の防災白書によれば、地震発生直後から各地で発生した火災件数は313件に上りました(余震を含む一連の地震の合計とのことです)。
ただ白書に記されている火災の規模は、石油コンビナート施設や危険物施設等と非常に大きいものが多く、さすがにこのようなレベルでは消火器で対応できそうにありません。
一方で、東京都内(東京消防庁の管内)では34件の火災が発生しています。東京消防庁の広報誌「とうきょう消防第3号」によれば都内で発生した火災の原因は次のようなものです。
- 電気ストーブ・ガステーブル
室内の本棚が倒れ、雑誌などが電気ストーブに落下してスイッチが入り、着火した
またキッチンで棚が転倒し、ガステーブルの点火スイッチを押して点火してしまい、棚に積んであった布に着火した - 鑑賞魚用水槽のヒータ
水槽が転倒し、中のヒータが衣類と接触して発火した - 白熱灯スタンド
スタンドが転倒して布団に接触して出火した
これらの火災がどこまで広がったのかとか、延焼するまでに消し止められたのかとか、そのようなくわしい部分についての記述はありませんが、もしこのような場面で消火器が手元にあれば、より早い段階で火を抑えることができたかもしれません(インターネット上の仮想博物館である消防防災博物館のコラムには、おそらくこれらの件についての状況が掲載されており、そこには消火器などで初期消火を行ったという記述も見受けられますが、先ほどの事例と1対1の対応が確認できませんでしたので詳細を省きます)。
地震によって引き起こされるかも知れない火災、また日常生活において発生するかもしれない火災に対し、それぞれの家においても消火器を備えておくことの必要性は十分ある、そのように言えるでしょう。
消火器はなぜ火を消すことができるの?
ところで消火器ってどういう仕組みで火を消すことができるのでしょうか?それに私たちが普段知っている消火器のイメージは、ピンク色の粉がぶわっと勢い良く飛び出すものだと思います。
ですが、消火器には実に様々なものがあって液体が出るものもあれば、ガス(二酸化炭素)が吹き出るものもあります。
そこで少しこの辺りのことを深堀りしていきます。
そもそも、ものが燃えるとは?
燃焼の三要素がポイント
基本的なこととして、ものが燃えることについて見ていきましょう。ものが燃えること、つまり燃焼は化学反応の一つと言えます。
燃焼とは?
ものが酸素と激しく反応(酸化反応)し、熱と光を出す現象を言います
キャンプなどで必須のBBQで起こす火や、BBQを楽しみ、お酒を片手に夜の静寂の中で定期的に繰り返す波音を聞きながらどっかりとチェアーに腰を沈め、今日一日の思い出を振り返りながらぼんやりと眺める焚き火台からめらめらと立ち昇るあの炎も、みんな燃焼反応が起こっているのです。このように述べると何だかキャンプファイヤーが大変恐れ多いものに見えてしまいますが・・・。
ですがそのような燃焼反応も、燃料である薪がないと始まりませんし、ライターなどで焚き付けや着火剤に火を付けることも必要です。それに先ほどの燃焼の説明にもある通り、酸素も大事ですよね。
つまり、ものが燃えるには三つのものが必要ということが言えそうです。
- 燃えるもの(可燃物)
- 酸素(酸素供給対)
- 火の元(着火源)
これらは燃焼の三要素と言われます。そしてこれらのいずれかが欠けても燃焼は起こりません(例外はあります)。
ということは、火災が起こった時に三要素のどれかを取り除くようにすれば消火ができる、ということになるんですね。
たとえば天ぷら油が燃えた場合、ナベのフタを被せたり濡れた布を被せるという消火方法があります。これを三要素で考えると、燃えている空間にフタをすることで、酸素(酸素供給体)をしゃ断しているんですね。
懐かしい小学校の理科実験で使ったアルコールランプもそうですよね。消すときにはフタをするのでした。
生活をしていく上で、これらの知恵は自然と身に付いており、当たり前のことかも知れませんが、燃焼の三要素をしっかり押さえておくことは、火災の正しい消火につながっていくことになるでしょう。
火災は三種類
今度は燃えているもの、先ほどの三要素でいう可燃物について少し見ていきます。火災は可燃物の種類によって分類されており、次のようになっています。
- A火災(普通火災)
紙、木やプラスチックが燃える火災 - B火災(油火災)
ガソリンなどの可燃性の液体や油などによる火災 - C火災(電気火災)
電気設備や電気器具などによる火災
この分類は、消防法に基づいて定められた「消火器の技術上の規格を定める省令」において定められています。ただ、C火災についてははっきりと条文に規定されておらず、「電気火災」という用語で規定されています。
(表示) 第三十八条
消火器には、その見やすい位置に次の各号に掲げる事項を記載した簡明な表示をしなければならない。
六 B火災(変圧器、配電盤その他これらに類する電気設備の火災(以下「電気火災」という。)を除く。)又は電気火災に使用してはならない消火器にあつては、その旨
出展 e-Govポータル 法令検索「消火器の技術上の規格を定める省令」
ではなぜ電気火災がC火災と呼ばれているのでしょう?これは私も分かりません。しかし、単純にA、Bと来たからC火災にした、というわけではないようです。おそらくはアメリカの規格に沿ってそのように呼び始めたのではないか、と思っています。
アメリカにはNFPA(National Fire Protection Association、全米防火協会)という組織があります。ここはその名前の通り、火災や電気、それらに関連する危険による死亡やケガ、財産そして経済的な損失を排除することを目的としています。
このNFPAが策定した規格の一つであるNFPA 10において携帯型消火器の標準が定められています。NFPA 10では火災のクラス分け(分類)が行われており、クラスA~D、そしてクラスKが示されています。
- クラスA
木材、布や多くのプラスチックを含む通常の可燃性材料による火災 - クラスB
可燃性液体や引火性の液体、石油系グリース、オイル、アルコール、および可燃性ガスによる火災 - クラスC
通電された電気機器による火災 - クラスD
マグネシウム、チタン、ジルコニウム、ナトリウム、リチウム、カリウムなどの可燃性金属による火災(金属火災) - クラスK
植物性または動物性の油脂などの燃えやすいものが含まれる調理器具での火災
(原文にはcooking mediaとありますが、おそらく調理器具、たとえばフライパンに油を入れると食材に熱が伝わりやすくなります。そのような意味でmedia(媒体)という単語が使われているのだと思います。ただ最適な言葉が浮かばないので単にものとしました)
出展 “ANSI Blog: NFPA 10-2018: Standard for Portable Fire Extinguishers“
(ANSIは米国国家規格協会という組織です。先に示したNFPA 10のリンク先から文書を読むのには登録が必要になるようでしたので、抜粋が掲載されているANSIの記事を示しました。
前半の三つを見てみると日本のA、B、C火災と同じことを示していると言えそうですね。このような背景もあって電気火災をC火災と呼ぶようになったのではないか?というのが私の見解ですが、真相は如何に・・・。
たとえば、天ぷら油による火災を考えてみましょう。これは油による火災ですから「油火災」となり「B火災」に分類される、というわけです。
住宅用消火器と業務用消火器のちがいは?
このように、火災といっても色々な分け方があることが見えてきたかと思います。そうなると次はどの火災にどの消火器を使えば良いのか?ということになってきます。
そこで消火器の種類について見ていきますが、ここで注意したいのは、消火器には業務用と家庭用(住宅用)があるということです。
ふだん私たちが消火器と聞いてイメージするのは、この赤いカラーが印象的なものだと思います。
実はこちらは職場や工場などありとあらゆる所で使用されている業務用消火器になります。ざっくり述べると、消防法施行令別表第一という表に書かれている施設など(防火対象物と呼ばれます)が対象になっています。法律(消防法)でこういった所には、火災に備えて消火器などの消火できるものを用意してね、という決まりになっているのですね。
そして何故赤色が多いかというと、そのように法律(省令)で決められているからです。
(塗色) 第三十七条
消火器の外面は、その二十五パーセント以上を赤色仕上げとしなければならない。
出展 e-Govポータル 法令検索「消火器の技術上の規格を定める省令」
一方で、住宅用消火器には省令による色の指定もありませんので、カラーリングも様々なものがあります。またしっかりとした消火性能は持ちながらも業務用のそれと比べて軽めにできているので扱いやすくなっています。
もちろんA、B、C火災に対応していますが、住宅用消火器の場合は、適応する火災が絵柄によってより分かりやすく分類されています。
住宅用消火器には、大きく分けて粉末薬剤(すべての火災に対応するのでABC粉末とも呼ばれます)を使用する粉末式と薬液による強化液式があり、どちらのタイプも上の画像の全ての火災に対応しています。その中でも、強化液タイプは天ぷら油の火災により強い消火能力を発揮します。
このように消火器と一口に言っても業務で使うのか、それとも家で使うのかといった目的から対応する火災、そして消火する方法と色々なバリエーションがあることが言えるかと思います。
使い方は3ステップ
そして消火器はいざという時にすぐに使えるものでなければなりません。そのため、使う方法は非常にシンプルで3ステップで薬剤が発射されるようになっています。
消火器を使う3ステップとは・・・
- 安全ピンを外す
- ホースを火元に向ける(ホースが無い消火器もあります)
- レバーを握って消火薬剤を噴射する
こちらは東京消防庁のYoutube動画です。実際に消火のイメージがつかめるかと思います。
以上が基本的な消火器に関して押さえておきたいポイントです。それでは実際にどのような住宅用消火器があるのかを見ていきましょう。
住宅用消火器一覧
先ほど触れましたように、住宅用消火器には粉末式と強化液式がありますので、そのタイプ別に取り上げていきます。
と、その前に!もう一つだけ!
消火器の有効期限は、おおむね5年間です。この期間を過ぎてしまったものは処分が必要になります。引き取りを担当する窓口に直接持ち込むか、あるいは引き取りを依頼する方法があります。
そのために2010年(平成22年)以降に製造された消火器にはリサイクルシールが貼られています。消火器のラベルやリサイクルシールの表示をしっかり確認し、有効期限が過ぎたら適切に処分することが大事です。ぜひ消火器リサイクル推進センターのサイトもチェックしてみて下さい。
粉末式
(1) 初田製作所「ニューエース PEP-5RX」
- 参考価格 \6,578(Amazon、税込み)
- 適応火災 普通、天ぷら油、ストーブ、電気器具火災
- 国家検定合格品
- 型式承認番号 消第24~43号
- 総質量 約2.9kg
- サイズ
- 全高 約430mm
- 全幅 約140mm
- 奥行 約89mm
- 胴径 89mm
- 薬剤量 ABC粉末 1.5kg
- 放射時間(20℃) 約18秒
- 放射距離(20℃) 3~5m
- 充てん圧力値 窒素(N2)ガス、0.7~0.98MPa
スリムな消火器
各種消火器や消火システムの製造・販売や加工を行う株式会社初田製作所の住宅用消火器です。住宅用ですので赤をメインとしたカラーリングが必須ではなく、緑を基調とした色合いになっており、スリムなデザインになっています。
一般的に業務用の消火器は薬剤量が多めになっていて、その分本体の重量も重くなっています。会社の防火訓練などで業務用の消火器を実際に扱った方もおられるかと思いますが、持ってみて最初にずっしりとした感覚を覚えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こちらのPEP-5RXは総質量が2.9kgと抑えられていますのでより持ちやすく、扱いやすくなっていると思います。
(2) モリタ宮田工業「アルテシモ MEA5H」
- 参考価格 \6,731(Amazon、税込み)
- 適応火災 普通、天ぷら油、ストーブ、電気器具火災
- 型式承認番号 消第26~34号
- 総質量 約2.2kg
- サイズ
- 全高 約390mm
- 全幅 約145mm
- 胴径 約102mm
- 薬剤量 ABC粉末 1.5kg
- 放射時間 約18秒
- 放射距離 4~6m
- 使用圧力範囲 0.7~0.98MPa
鮮やかなキャンディレッドの消火器
消火器や消火設備などの開発・製造・販売を手掛けるモリタ宮田工業株式会社の住宅用粉末消火器です。こちらはアルテシモという粉末消火器のラインナップがあり、その住宅用という位置付けになっています。
このシリーズはアルミ素材による一体成型型容器が特徴で、それが内部からの圧漏れ対策になっています。アルミニウムは元々腐食に強い材料となっていますので、全体的に経年劣化への対策が施されている消火器と言えるでしょう。底部にはマジックホールと呼ばれる切り欠きがあり、サビの原因となる湿気対策も行われています。
また鮮やかなキャンディレッドの塗装がなされていますので、なじみ深い消火器の色であることも選定理由の一つになるのではないでしょうか。
強化液式
(1) 日本ドライケミカル「ポッシュガードリキッド PGL-1」
- 参考価格 \6,780(楽天、税込み)
- 適応火災 普通、天ぷら油、ストーブ、電気器具火災
- 国家検定合格品
- 型式承認番号 消第29~6号
- 総質量 約2.7kg
- サイズ
- 高さ 約385mm
- 外径 89mm
- 薬剤量 強化液 1.0L
- 放射時間(20℃) 約22秒
- 放射距離(20℃) 4~6m
- 使用圧力範囲 0.7~0.98MPa
長く遠くまで放射可能な強化液消火器
各種消火設備や消火器の設計・製造・販売・施工・保守を行う日本ドライケミカル株式会社の強化液消火器です。こちらも青緑のカラーが施されており、住宅用ならではの色合いになっています。
PGL-1は普通火災から電気器具火災までの住宅用で考えられる全ての火災に対応しており、その放射距離も4~6mと粉末式よりも長くなっています。遠くから安全に火災を消火できる一本と言えるでしょう。
(2) モリタ宮田「キッチンアイ」
- 参考価格 \6,820(楽天、税込み)
- 適応火災 普通、天ぷら油、ストーブ、電気器具火災
- 型式承認番号 消第30~18号
- 総質量 約2.2kg
- サイズ
- 全高 約375mm
- 全幅 約145mm
- 胴径 約85mm
- 薬剤量 強化液(中性) 1.0L
- 放射時間(20℃) 約12秒
- 放射距離(20℃) 4~6m
- 使用圧力範囲 0.7~0.98MPa
- カラー
- エメラルドグリーン MVF1HAG
- ルビーレッド MVF1HAR
人にやさしい中性薬剤を使用した強化液消火器
先ほど取り上げたモリタ宮田工業株式会社の強化液消火器です。強化液がお酢(酢酸)と食品原料から作られており、中性の薬剤になっています。そのため、もし消火器を使用した後でもその後処理は薬剤をふき取るだけになるので簡単になります。
カラーもエメラルドグリーンとルビーレッドの二色による展開です。見た目もコンパクトな人にやさしい強化液消火器です。
(3) 初田製作所「ハローキティ 住宅用消火器」
- 参考価格 \9,310(Amazon、税込み)
- 適応火災 普通、天ぷら油、ストーブ、電気器具火災
- 国家検定合格品
- 型式承認番号 消第23~189号
- 総質量 約2.7kg
- サイズ
- 全高 約385mm
- 全幅 約135mm
- 奥行 約89mm
- 胴径 89mm
- 薬剤量 強化液 1.0L
- 放射時間(20℃) 約22秒
- 放射距離(20℃) 4~6m
- 充てん圧力値 窒素(N2)ガス 0.7~0.98MPa
- カラー
- 白1 HK1-WF
- 白2 HK1-WR
- 赤 HK1-RD
- 黒 HK1-BK
多彩なデザインのコラボモデル
初田製作所からこちらの強化液消火器を取り上げてみました。ご覧のように、あのハローキティとのコラボモデルになっています。
強化液消火器は特に天ぷら油火災との相性が良く、日常的にも備えておくともしもの時に大いに役立ってくれると思います。消火器のデザインも継ぎ目がないシームレスボトルになっており、容器の安定性とコンパクトとさの両立を実現しています。
カラー展開は白色2パターン、赤色、黒色と4タイプが用意されていますので、インテリアに合わせてそろえることもできそうです。
(4) ヤマトプロテック「YAMATO SAKURA(YTK-1S)」
- 参考価格 \13,860(楽天、税込み)
- 適応火災 普通、天ぷら油、ストーブ、電気器具火災
- 型式承認番号 消第29~3号
- 総質量 約2.47kg
- サイズ
- 全高 約37.4cm
- 全幅 約13.2cm
- 薬剤量 強化液(中性) 1.0L
- 放射時間(20℃) 約21秒
- 放射距離(20℃) 3~6m
- 使用圧力範囲 0.7~0.98MPa
- カラー
- Ai(藍) 青色
- Zouge(象牙) ベージュ色
- Kuri(栗) 茶色
- Seiji(青磁) 薄緑色
- Beni(紅) 赤色
軽量でカラバリ豊かな強化液消火器
消火装置や火災警報装置などの製造、販売などを手掛けるヤマトプロテック株式会社の強化液消火器です。強化液は中性になっており、こちらも人にやさしい消火器になっています。
そして、カラーバリエーションが5色と大変豊かになっている点が一つの特徴です。そのこともあってか、他製品と比べて価格はかなり高くなっているようですが、部屋の感じにフィットする消火器をお求めであればその希望に沿えることができるかも知れないですね。
まとめです
今回の防災グッズは「住宅用消火器」を取り上げました。大きな災害、特に大地震によって火災が発生するリスクはゼロではありません。もし火災が起こった場合に消火器があれば火が燃え広がる可能性を低くすることができます。
ただし、消火器は初期消火をするためのものです。消火器が効かず、炎が天井まで登ってしまうようなことがあった場合はすぐに避難することが必要です。
ふだんの生活においても、何らかのきっかけで火災が発生するかも知れません。防災は日常生活の延長にあると思います。ぜひお家の火災防災対策を進めてみてください。