こんにちは、管理人のアカツキです。
今回の防災グッズは「ヘルメット」を取り上げてみたいと思います。
一般的にヘルメットというと
このようなものが一般的だと思います。
スポっと頭にかぶり、あごひもをキュッと締めて指差し確認ヨシ!
私もエンジニア時代、お世話になったことが度々あります。
ヘルメットにも用途に合わせた様々な種類があります。本記事ではその中からコンパクトに収納もできる「折りたたみ型」をピックアップしてみます。
ヘルメットとは?
頭を守るための保護具です
まず基本的なところから確認していきましょう。
ヘルメットとは、頭部を衝撃から守るためのアイテムです。
人の体はどこも危険にさらして良い部位などありませんが、特に頭には気を付けないといけません。
災害時、特に地震においては建物の中であれば天井からの落下物、屋外であれば屋根瓦や看板、割れた窓ガラスなど、頭上からのリスクが考えられます。
過去の大地震においてもそのような落下事例で負傷をしたり、命を落とした事例があります。
特に直近の例ですと、2021年(令和3年)2月13日に発生した福島県沖地震でも落下物でケガをした事例があります。
こちらの「令和3年2月13日震度6強及び2月15日大雨・洪水・暴風警報による被害状況即報(第47報) 」8~9ページに人的被害の報告があり、落下物による頭部負傷と電球落下による頭部負傷の事例が確認できます。
こちらの記事では、茨城県桜川市と竜ケ崎市で落下物による負傷事例が読み取れます。
落下物によるケガのリスクはどこにいても起こり得ます。
その時に頭を守るためのヘルメットがあれば、リスクを大きく減らすことができると思います。
衝撃を守るための構造になっています
ところで、ヘルメットは先ほどのイメージのような形になっていますが、中身はどのようになっているのでしょうか。
産業用の安全衛生保護具や標識などを製造・販売する谷沢製作所にとても分かりやすい図がありましたのでこちらを引用させて頂きます。
ヘルメットをズバっと切った断面が見えています。
このように断面で見ると、いくつかの部品から構成されていることが分かります。
- 帽体
- 衝撃吸収ライナー
- ヘッドバンド(着装体)
- ハンモック(着装体)
- あごひも
これらの部品が組み合わさって、ヘルメットは着用者の頭部にかかる外部からの衝撃を最小限に抑える働きをしてくれます。
単に一番外側の帽体だけでヘルメットが成り立っているのではなく、ここと頭部の間に衝撃を軽減する仕組みが備わっているんですね。
国で定めた規格があります
ヘルメットは様々な部品から構成され、衝撃を最小化する仕組みが備わっていました。
それでは、実際にどれくらいの衝撃を吸収してくれるのでしょうか。
それを保証するために、国でヘルメット(政令で定めるもの)にこれだけの性能を持たせなさいという規格を定めています。
その性能を一定の条件で試験することによって確認し、試験に合格することではじめて販売が行われることになっています。この試験のことを「型式(かたしき)検定」と呼びます。
法律上は「保護帽」と言います
この検定の根拠になっている法律が「労働安全衛生法」で、通称「安衛法」です。
名前の通り、職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進することを目的とした法律です。
ヘルメットの規格については第42条にその記述があります。
(譲渡等の制限等)
第四十二条
特定機械等以外の機械等で、別表第二に掲げるものその他危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、政令で定めるものは、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない。
出展 e-Gov「労働安全衛生法」
ちょっとややこしいですが、ポイントは条文の中にある「別表第二」です。
別表第二(第四十二条関係)
一 ゴム、ゴム化合物又は合成樹脂を練るロール機及びその急停止装置
二 第二種圧力容器(第一種圧力容器以外の圧力容器であつて政令で定めるものをいう。次表において同じ。)
三 小型ボイラー
四 小型圧力容器(第一種圧力容器のうち政令で定めるものをいう。次表において同じ。)
五 プレス機械又はシャーの安全装置
六 防爆構造電気機械器具
七 クレーン又は移動式クレーンの過負荷防止装置
八 防じんマスク
九 防毒マスク
十 木材加工用丸のこ盤及びその反発予防装置又は歯の接触予防装置
十一 動力により駆動されるプレス機械
十二 交流アーク溶接機用自動電撃防止装置
十三 絶縁用保護具
十四 絶縁用防具
十五 保護帽
十六 電動ファン付き呼吸用保護具
出展 e-Gov「労働安全衛生法」
上が別表第二の中身です。
ご覧のとおり、たくさん種類がありますね。
そしてこの中の十五のところに「保護帽」という文言があります。
こちらが先ほど来、ヘルメットヘルメットと連呼しているそのものを示しています。
法律上はこのような名称で呼ばれているんですね。
そして、型式検定については第44条の2で規定されています。
(型式検定)
第四十四条の二
第四十二条の機械等のうち、別表第四に掲げる機械等で政令で定めるものを製造し、又は輸入した者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の登録を受けた者(以下「登録型式検定機関」という。)が行う当該機械等の型式についての検定を受けなければならない。ただし、当該機械等のうち輸入された機械等で、その型式について次項の検定が行われた機械等に該当するものは、この限りでない。
出展 e-Gov「労働安全衛生法」
モノを作ったらちゃんと検査してね!ということを言っています。
検査の対象品については「別表第四」に規定があります。
別表第四(第四十四条の二関係)
一 ゴム、ゴム化合物又は合成樹脂を練るロール機の急停止装置のうち電気的制動方式以外の制動方式のもの
二 プレス機械又はシャーの安全装置
三 防爆構造電気機械器具
四 クレーン又は移動式クレーンの過負荷防止装置
五 防じんマスク
六 防毒マスク
七 木材加工用丸のこ盤の歯の接触予防装置のうち可動式のもの
八 動力により駆動されるプレス機械のうちスライドによる危険を防止するための機構を有するもの
九 交流アーク溶接機用自動電撃防止装置
十 絶縁用保護具
十一 絶縁用防具
十二 保護帽
十三 電動ファン付き呼吸用保護具
出展 e-Gov「労働安全衛生法」
こちらもたくさん書いてありますが、十二を見てください。ここに「保護帽」があります。
ヘルメット(保護帽)についてその性能はこれくらいですよ、という規格があり、その性能が本当にあるのか型式検定で確認をすることを法律は求めています。
どんなテストを行っているの?
では具体的にどのような試験をすれば良いのかということについて、次のような告示が出ています。
(衝撃吸収性能等)
第八条
保護帽は、次の表の上欄に掲げる区分に応じ、同表の中欄に定める試験方法による試験を行つた場合に、それぞれ同表の下欄に定める性能を有するものでなければならない。
出展 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「昭和50年労働省告示第66号」
くわしい内容は省略しますが、ここで大事なことは、保護帽について二つの区分による使用が想定されていることです。
一つは飛来・落下物用、そしてもう一つが墜落時保護用です。
告示では、これらの区分それぞれに「耐貫通性能」と「耐衝撃性能」の二つの基準を設けています。
それぞれの基準は使用区分によって少し違っています。
いずれにせよ、テストを行って二つの基準が満たされれば(それ以外にも皮膚に障害を与えない材料が使われているとか、着装体の有無なども求められています)、その保護帽は「飛来・落下物用」または「墜落時保護用」あるいはその両方の作業に使用できるものとして認められるということになります。
上の図が耐衝撃性能を調べるための試験イメージです。
ヘルメットをかぶせた模型の1m上から、重さ5kgの鋼鉄製ストライカ(打ち付けるものだとか、叩くものを意味します)を落下させてぶつけ、その時の衝撃力を調べます。
「防災用」の規格はありません
保護帽については以上のような規格があることが分かりました。
それでは肝心の「防災用ヘルメット」についてはどのような規格があるのでしょうか?
実は「防災用ヘルメット」の規格は存在しません。
ヘルメットの製造、輸入業者が多数加盟する日本ヘルメット工業会では「保護帽を防災用ヘルメットとしてご使用のお客様へ」という文書を発表しています。
それによれば、防災用ヘルメットを次のように定義しています。
つまり、工事現場などでの作業には使用せず、あくまでも災害時の非常時のみに着用するものを防災ヘルメットとしています。
保護帽は、港での荷物の積み下ろしや高所作業などで着用しなければならないと安衛法(労働安全衛生規則)で定めています。防災用という規定は無いんですね。
しかし、保護帽に関する規格や型式検定は存在しますので、これをそのまま利用(準用)して防災用ヘルメットの規格としているメーカーが多いようです。
このことは、非常時にヘルメットを着用する理由の最たるものが落下物対策であることから妥当だろうと思います。
そして保護帽検定品のものにあっても、それを使用あるいは保管していても6年が経過したヘルメットは交換することを呼びかけています。
帽体の材質によってはより短い3年以内に交換を求めている製品もあります。
防災用ヘルメットの購入後は、必ず説明書を読んで使い方、交換の目安をしっかりと押さえておいてください。
折りたたみヘルメットの紹介
それでは実際に折りたたみヘルメットを見ていきましょう。
一般的なヘルメットは、その半球状の形から収納場所という点でやや難があるように思います。
折りたたみ型は収納という点だけでなく、バッグなどに入れて持ち運ぶ時にもスペースを小さくできるという利点があります。
今回取り上げた製品はみな保護帽の規格である「飛来・落下物用」にも対応しています(一部は「墜落時保護用」も満たしています)。
(1) 谷沢製作所「Crubo」
クルッと回すだけ
冒頭にも取り上げさせて頂きました株式会社谷沢製作所が販売する折りたたみヘルメットです。
飛来・落下物用、墜落時保護用と両方の検定に合格。また47~62cmまでの幅広いサイズに対応。ヘッドバンドの取り付け位置を変更することで、子どもから大人まで着用可能です。
カラーもオレンジ、ホワイト、ブルーの3色で展開しています。
こちらの折りたたみタイプは、上部が可動することで帽体を組み立てるようになっており、シンプルに回転させるだけとなっております。
(2) トーヨーセフティー「BLOOM III」
上部を回転して組み立てます
ヘルメットや防じんマスクなど産業用の安全用品を販売する株式会社トーヨーセフティーから、BLOOM III(ブルームスリー)を取り上げました。
こちらはヘルメット帽体の上側が折りたたまれており、これを立てて180度クルっと回して組み立てるようになっています。また収納袋が付属しています。
検定は飛来・落下物用に加えて墜落時保護用も取得しており、防災用となっておりますが、作業用ヘルメットとしても十分に使用することができます。
BLOOM IIIはカラーバリエーションも豊富で、6色展開をしています。
ヘルメットと言えば白色が思い浮かびますが、選択の幅が広がると思います。
(3) 加賀産業「オサメット」
カチッ、カチッ、カチッの3ステップでかぶります
創業時からヘルメット事業を手掛け、現在は航空宇宙機器の製品や部品の製造販売事業も行っている加賀産業株式会社のヘルメットです。
「オサメット」という名前を体現するかのごとく、非常にコンパクトな収納を実現しています。
いわゆる蛇腹(ジャバラ)構造になっていて、着用も非常に簡単です。
頭に合わせたらカチッ、カチッ、カチッと下に引っ張ることでジャバラが展開され、帽体が出来上がります。先のカチカチ音はその段階でジャバラを固定するロックが働いたことを示します。
3回のロック音が聞こえれば、あとはバンドを調節して完成です。
収納時は厚さ45mmと平たくなりますし、梱包箱(パッケージ)もその利用状況に応じた多彩な収納状況を提案しています。ヘルメットだけでなくパッケージにもアイデアが盛り込まれた製品です。
(4) ミドリ安全「Flatmet2」
厚さ3.3cmの折りたたみヘルメット
安全靴などの安全衛生用品の販売で知られるミドリ安全株式会社の折りたたみヘルメットです。
このヘルメットはご覧の通り、より折りたたみ感が強い形状が特徴だと思います。
製品名にもあるflat(平ら)が示す通り、保管時には厚さ3.3cm(33mm)と本当にヘルメットなのかと思えるくらいの薄さになります。両端部分を押し込むことでヘルメットの形になります。飛来・落下物の検定にも合格しており、コンパクトさと性能が両立しています。
またこちらのシリーズには、よりサイズが小さいお子様向けのFlatmet-kids(フラットメット キッズ)も用意されています。こちらも飛来・落下物用の規格にしっかり対応していますよ。
(5) DICプラスチック「IZANO2」
ヘルメットの内側をプッシュして組み立て
プラスチックの成型加工を手掛けるDICプラスチック株式会社のヘルメットです。IZANO2とある通り、この前モデルにIZANOという製品が販売されています。
IZANO2は、そのIZANOと比べて折りたたみ時の厚さを23%薄い63mmに改良しています。
また、対応するサイズは47~62cmと幅広く、子どもから大人まで着用することができます。
展開はヘルメットの内側から押し上げるだけ。オサメットは着用後に引き下げて展開するのに対し、こちらは着用前に展開してからかぶります。
検定も二種類合格しており、カラーバリエーションも豊富です。さらに法人向けにパーツの色をカスタマイズできるオーダーサービスも実施しています。
色を多色展開することで、たとえば家族がどこにいるのか一目で区別できる、といった識別性を盛り込んでいるのはないかと思います。必要な機能を兼ね備えたヘルメットと言えるでしょう。
まとめです
今回の防災グッズは折りたたみ型「ヘルメット」を取り上げました。
通常のヘルメットは何かと収納や置き場所を選んだり、かさばるということがあると思います。
折りたたみタイプはコンパクトになることでスペースの問題を解決し、またすぐに組み立てて着用できる、という利点があります。
加えて各メーカーとも様々な方法で折りたたみヘルメットを実現しており、保護帽の検定にも合格していることはアイデアの豊かさと安全を追求する姿勢を感じました。
災害時にヘルメットを着用することは、落下物による被災のリスクを減らしてくれるはずです。そのためにはあごひもをきちんと締めるなどの正しい着用が前提になることに注意を払い、いざという時の備えを強化していきましょう!